第三話:銀の仲介 ――大切な存在を守るためなら、手を染めることなど厭わない ――大切な存在を守るためなら、邪魔モノを消すだけ、それだけのこと ――それだけのこと 「兄貴! 何をやっているんだ?」 騒動に駆けつけたのだろう。 「郁か、離れとけ」 泉は淡々と告げる。ただ、その表情には今まで感じられなかった感情を感じる。 大切な妹を巻き込みたくないと思う心配という感情か。 「やっぱり郁はお前のか」 「あぁ、最初は郁を疑って郁に近づいたんだろ?」 「……」 榴華は瞳を細めて泉を睨む。一体どうやって自分が郁に近づいたことを知っていたのだろうかと、もしかしたらそれを含めて作戦の一つだったのではないかと榴華は疑ったが、郁の兄を見る表情にその可能性を打ち消す。郁は何も知らない、そのような表情をしていた。 偽りではない、本心で、泉を兄を心配している。だが、普通の“心配”とは何かが違うように感じられた。そう、兄の生命の心配をしているのではない、 どちらかというと兄が“誰かを殺す”ことを心配しているのだ。 「郁、離れていろ」 「だが、兄貴。こいつらと私は昼間少しの間だが行動を共にしたが悪い印象を受けなかったぞ」 郁は榴華たちを庇おうとしている。 その事実に篝火と朔夜は眉をひそめる。兄が人殺しをするのを避けようとしているのか。 ならば、兄がこれまで罪人で殺人をしていたことを知らないのだろうか、そう口を開こうとした時。それより早く泉が口を開く 「あぁ、だろうな、だが将来的にお前に害をなす可能性を含んでいるのならば今殺しておいたところで損は全くない」 「どんなだ!!」 思わず朔夜は叫んでしまう。泉は白い目を朔夜に向ける。 「罪人の牢獄は何処までいっても罪人だ、だからだ」 「……」 朔夜は何も言わない。それは事実であるから、だがだから 「この街に来た時点でお前らだって同類だろう」 篝火が言葉を引き継ぐ 「まぁ、そうだな」 「……何が目的でこの街で殺人を?」 殺人という単語に郁は驚いた表情で兄の顔を見る。 [*前] | [次#] TOP |