零の旋律 | ナノ

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 榴華は罪人の牢獄に来る前から驚異的な戦闘能力を保有していた。人を傷つける為の力を。
 それを恐れた人々がいた。そしてそれを気にしない人がいた。だから榴華はその人を守るために生きようと誓った。
 その人に害なすものは許さない。その為に自分がどんな罪を背負っても構わないと。
 だから榴華は此処にいる。守るべき人を守るために。
 優しく微笑んでくれたその微笑みを失わないために。


「いい加減にしろっ」

 均衡は崩れない。泉は榴華が今まで相手にしてきた罪人の中でも群を抜いて戦闘にたけている。
 後ろにいる篝火や朔夜も戦闘にはたけている。
 朔夜は榴華が此処に来る前にから罪人の牢獄にいたため榴華は詳しくは知らなかったが、篝火のことは多少榴華にはわかった。
 篝火は泥棒をやっていた経緯から身軽さ自体は恐らく榴華を凌ぐだろう。だが篝火は罪人の牢獄に来てからも滅多に人を殺さない。戦闘に慣れているが、篝火は人殺しには慣れていないのだ。
 そこが榴華が感じる篝火と泉の違い。
 この罪人は罪人の牢獄に来たばかりだというのに、人を殺すことに慣れている。

「お前……何者だよ」

 榴華は恐怖を感じる。
 否。人を殺すことに慣れているだけならば、今まで榴華は連続殺人鬼快楽殺人鬼、色々な殺人犯を見てきた。中でも筆頭して狂っているのは最果ての街支配者梓だろう。
 しかし、泉はその殺人鬼とは違った。
 瞳が、人を殺すことに何も感じていない。快楽も興味も優越感も罪悪感も何も。“ない”

 そこに榴華は背筋が凍る思いをする。
 罪人の牢獄に来て長い罪人相手ならばそう感じることはなかっただろう。
 だが、相手は罪人の牢獄にきて3日足らずの新入り。
 一体何者なのか、疑問に思わずにはいられない。
 一体何をしてこの土地にきた


『お前は何者だ』


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