V そして、少しいった角を曲がった先の通り、それも大通りで二人の人物と周辺に人だかりがあった。 二人の人物のうち一人は地面に尻もちをついていて、恐怖に瞳が怯えている。 もう一人の人物はひと言で言うならば闇。 右手に黒い鞭を握り全身を黒い服で覆っている。腰まである髪の毛も瞳も漆黒。透き通るように白い肌だけがその者を闇ではないと判断させるような。 瞳は凍てついて、何ものもを拒絶したような暗い闇が見え隠れする。 誰もがその瞳に射抜かれるようにその場を動けなかった。 榴華たちが現れるまでは 「自分、見知らぬ顔やな、誰や」 榴華が地面に尻もちをついている罪人を庇うように前に出る。 「自分逃げるなよ。聞きたいことがあるから、だからちょい後ろに下がっときん」 小声で尻もちをついている罪人に告げると、罪人は数回頷いた後後ろに下がって周囲の人だかりと同化する。そして、榴華はその罪人が連続殺人を犯した殺人犯だということを知っていた。自負していた男だったのだから―― 「自分、誰や」 答えが返ってこないため、闇を纏った人物に再度声をかける。 「ほう、罪人の牢獄第一の街支配者榴華か、なんでお前が態々現れる?」 「自分の……いや、俺のことを知っているのか。まぁそうだけど、お前は何者だ?」 その者が纏う雰囲気に榴華は素を出す。 偽っている余裕がない、榴華はそう肌で感じ取る。 「お前に答える義理はあるのか?」 「ないだろうな、けれど答えてもらう」 「……泉だ」 その者――泉は名前を名乗る。 それが偽名なのか本名なのか榴華には判断できない。 ただ、何者も拒絶して来たような冷たい声が嫌でも耳に残る。 「なんでお前はこの街の罪人を殺し歩いている?」 それは確証。 「言ったはずだ、答える義理はないと」 「俺はこの街の支配者だ」 「ならば、対価をよこせ。何もなしに何かを答えることは私はしない」 「……」 榴華は朔夜と篝火に目配せをする。 二人は同時に頷き、榴華の後に控える、そして周辺の罪人に目配せをする。それだけで意味が通じる。罪人たちはさらに遠くに離れる。 第一の街支配者榴華。支配者たちの中で最強とも呼ばれる戦闘能力を保持する男が今、戦う。 [*前] | [次#] TOP |