零の旋律 | ナノ

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「まぁ、俺も最初は思ったよ」

 篝火もそれに同意をする。この街に来たころは本当に驚きの連続だった。
 今では慣れた篝火も、慣れるまでは一々驚いていた。

「まぁ、犯罪者ってもどれもこれもが危険人物ってわけじゃないし、この街である程度生きていきゃ、多少はましになるってこともあるしな、第二の人生だと思って生活を始める奴もいるし、様々だよ」
「そうだろうな……」
「あぁ」
「んじゃ、まぁいきましょか?」

 タイミングを見計らって榴華が声をかける。四人とも料理を食べ終わっている。
 この店は人気があって、今は昼時だからそこまでではないが、夜には行列が軽く出来ることもある。
 正し、そこは喧嘩が起きやすく危険地帯ともいえたのだが。
 榴華がお会計を支払って店から出る。
 そして、郁とは別れた。その様子に朔夜は僅かながら驚きを見せる。

「なんだ、あっさり返すんだな」

 朔夜は郁が、この街で殺人を犯している殺人犯だとは思ってはいない。けれど、郁を食事に誘ったといことは榴華自身何かしら考えがあってのことだろうと思ってのこと。 なのに榴華は何もすることなく、本当に食事だけで郁を帰してしまった。そのことに朔夜は疑問を感じたのだ。

「まぁ、ええよん。暫く様子見って処やん。ガード堅い子やし」
「へぇ」
「心は閉ざしているから、あんまり一日でしつこいと警戒して、得られるもんも何も得られなくなるんよ、慎重にしんちょーにや」
「意外と策士だよな」

 篝火は呟く。榴華は何も考えていないようで案外考えている。
 切れ者であった。普段の言動からはそうは考えられない、否、そう思わせないようにしている榴華に篝火は最初出会った時と同じ感想を心の中で呟く“道化”

「それに、あの子……この街に来たばかりなんに“名前”しか名乗らんかった」
「……あぁ」

 この街では名字を名乗ることを罪人はしない。それが暗黙のルールの一つ。
 そして、その暗黙のルールを郁は破らなかった、それはつまり暗黙のルールを“知っていた”ということ。

「あの子の兄が色々詳しいみたいやからねん……」
「相変わらずだこと」

 その後暫く一緒に三人で適当に行動を共にする。夜になり目ぼしい人物に出会えることがなかったため一旦帰宅し本日はお開きにしようとした時だった。
 悲鳴が聞こえる、微かだが、はっきりと耳に残る悲鳴が。
 普段なら誰も気に留めなかっただろう、しかし今の彼らの目的は連続殺人を繰り返している人物を捕まえること。別に捕まえなくてもいい、殺しても構わないのだから。
声の聞こえた方向に走る

「こっちだ」
「わかるのか?」

 榴華の言葉に篝火は頷く。

「此方と元泥棒だ、耳には自身がある」

 その言葉に朔夜と榴華は篝火の後を走る。途中で朔夜は二人の体力についていけなくなりそうになる。



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