第二話:黒の少女と青年 「そやそや、折角出会ったゆーことで、一期一会の機会に生じて一緒に昼飯でも食わん? 御馳走するやで」 榴華はそういって懐から財布を取り出し、ひらつかせる。 「……むぅ……、お言葉に甘えよう」 暫くの間悩んでいた郁だが、榴華のことを疑う必要はないと感じたのか、それとも仮に何かあったとしてもなんとか出来ると考えたのか、榴華の申し出を受けることにした。 そんな様子を傍目に篝火は榴華が何かを企んでいることを感じた。 そして、榴華の驕りでご飯を食べられるから今日の昼飯はタダだと内心少し喜んでいた。 「じゃあ、いきましょーか」 「ってか此処、食堂的なのがあるのか?」 当然の疑問が郁の口から零れる。 「あるんだよ、それが。2年ほど前に榴華が作らせた」 「そうなのか」 朔夜の説明にイマイチ納得しない郁だったが、それ以上追及することもしなかった。 街の中心部まで歩くと、他の建物の二倍はありそうな建物が目につく。 この街の建築物と変らずコンクリートで作られた建物だが、窓硝子がほぼ一面に貼り付けられていて、外から中の様子を伺い知ることが出来る。 中は罪人たちでにぎわっていた。 「ほぉ……」 感嘆を思わず郁の口から出てくる。まさかこのような場所があるとは思ってもみなかったからだ。 内心、兄ならばこういったこともあるのを知っていたのだろうなと思う。 むしろ兄が知らないことの方が郁にとっては驚きだ。 中に入ると女性のウェイトレスが、テーブルまで案内をしてくれた。一体彼女はどんな罪を犯して此処に来たのか、そしてどういった経緯で此処で働いているのか気になり榴華に目線を送ってみると榴華は笑って誤魔化す。 席に着くとメニュー表があり、料理の品ぞろえはかなりのものだった。 四人は適当に料理を注文する。 品が届くまでの間軽く談笑をすることにした。 「此処の料理はうまいぞ」 朔夜の言葉 「でも、此処の料理は値段が他の店より高いんだけどな」 「そうなのか」 「あぁ、でも元料理人が作っている料理だから味は保証済み」 「へぇ」 普通に会話をする朔夜と郁を傍目に篝火は自分と朔夜の出会いは喧嘩腰だったのに、スムーズに会話が今回は進んでいると感心する。郁は篝火が見る限り朔夜と同様に気が長くはなさそうに見えた。同族嫌悪でもするかと思ったが、それは杞憂に終わると篝火は考える。 [*前] | [次#] TOP |