Y 実際この街に来る前に何かをやっていたことは明白だった。 「で、随分強いけどお前何ものよ」 「この街では人の過去を詮索するものはルール違反じゃないのか?」 「へぇ、三日で結構この街のルールを知っているんだな」 篝火は純粋に驚く。篝火自身がこの街にきて三日目のころは生活リズムをやっと得たところで、街のルール等殆どしらなかった。食べ物はその辺の建物に侵入して盗み、日々生きていたからだ。 今では大抵のルールを知っている。 「あぁ、それは私じゃないよ」 「どういうことだ?」 その言葉に榴華と朔夜も言い争いを止めて郁の方を見る。 三つの視線が一気に集まり緊張したのか照れたのか半歩だけ後ろに下がってから郁は答える。 「私の兄がそういったことを調べてくれたんだ。だから私自身は特に何もしていない」 「お兄さんいたん!?」 榴華が変な声を上げる。驚いて声が高くなったけれどそれを慌てて戻そうとして結局変な声になってしまった。その声が面白かったのか郁は手を口に当てて微笑する。 「あぁ、私に兄がいるよ」 「……」 「何か問題でもあったか?」 無言になった榴華に郁は怪訝そうな顔をする。何か不味いことでも口走ったのだろうかそんなことが頭のをよぎったからだ。 「いや、なんでもねぇーよん。自分、いくつ?」 「私は16だ」 「ってことはサクリンよりいっこした何ね。なら、同世代ってことでなかよーしたらええよ」 「サクリン……朔夜とそちらの少年は言っていなかったか?」 郁は朔夜の方を見る。朔夜は機嫌が悪いのか眉間に皺が寄っている。思わず若いころから皺がばかり寄せていたらとれなくなるんじゃないかと、結構どうでもいいことを考えてしまう。 「あぁ、俺は朔夜だ。サクリンと呼んだら殺す」 物騒な言葉を平然とはく朔夜だが、郁はそれを気にした様子はない。 「そうか、私はさっきも言った通り郁だ。下手に敬称は面倒だからいらない。郁で構わない」 「元からそのつもりだ。よし、お前俺より年下なら俺を敬え」 「なんでだ」 「なんとなくだ」 「どういう原理だ」 「そういう原理だ」 「意味不明だな」 「あぁ」 二人は互いに軽く笑いあう。 朔夜も郁が犯人だとは思わなくなっていた。 そして榴華は郁の兄と呼ばれた人物が今回の事件の犯人だろうとある種の確信を得ていた。 その兄がどんな人物かは知らないが。郁が簡単に男三人を倒せる実力があるのなら、兄も同様あるだろうと、先入観を抱いたのかもしれないが。 [*前] | [次#] TOP |