零の旋律 | ナノ

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「んー君いつ罪人の牢獄にきたん?」
「私か、何故そのようなことに答えなければならない?」
「そうやなぁ、そりゃあ突然見知らぬ人に聞かれたら躊躇するよなぁ、自分はこの街の支配者しているんよ、だから君は見知らぬ人やから聞いただけん」

 榴華は簡単に説明する。決してこの街で罪人を殺しまわっている犯人を捕まえる為だという本来の目的を告げずに。

「そうか……この街には支配者なるものがいあるのか。私は3日前からだ、この街にいるのは」

 榴華が支配者だということを信じたのかは朔夜には疑問だったが、篝火は信じたと確信した。
 多分、榴華の口調がふざけていたからだろう。支配者だという雰囲気の欠片のなさは逆に真実性を持たせる。実際榴華がこの場に現れた時に回りにいた野次馬たちが数歩後ろに下がったのを郁は見ていたのだろう。だから、支配者という言葉に素直に納得したとそうとった。
 そして郁の三日という言葉に、榴華の瞳は僅かに細められた。
 三日前から、罪人の殺人が一気に出てきたのだ。

「そうなんかー、自分わからんことあったら、自分にききな、多少のことならお世話してやるんよー。こっちが」

 そういって榴華は明るく振舞いながら郁の様子をうかがう。一方指を指された朔夜はなんで俺がという顔をしながら抗議する。

「お前また俺に何か面倒事を押し付けるつもりか!? 俺は面倒なことが嫌いなんだよ」
「しているんよー、だから、その嫌いなことを克服して好きにしてあげよーよとしているんやん」
「そんなつもりないだろ、てめぇが楽したいだけだろ!?」
「そのとーり」

 朔夜は榴華から数歩後ろを取る。

「げっ、サクリン。術つかうんやめー」

 朔夜が榴華から離れた理由に即座に気がついた榴華は、すぐに降参のポーズをする。
 朔夜が数歩意図的に離れた時は朔夜が術を使う相図。何故すぐにその場から攻撃しないで距離を取るのかは、簡単、朔夜は接近戦が苦手だから。接近戦にいたっては喧嘩の素人と言っていいほど何もできない。朔夜自身もそれを承知しているから、距離を取るのだった
 榴華が降参したことで、朔夜も距離を取るのは止めた。


「いつもこうなのか?」

 初めて榴華と朔夜のやりとりをみた郁は、二人を安全地帯から傍観していた篝火に問いかける。

「あぁ、その通り、ほおっておくと日が沈む」
「沈む日がないじゃないか」
「まぁ、その通りなんだけど」

 篝火にはさっきの男たちを殺さなかった事もそうだが、この郁という人物が殺人犯にはどうにも思えなかった。確かに何かをやっていただろう俊敏な動きは相当のてだれだと感じさせる。


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