零の旋律 | ナノ

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 一瞬ともいえる出来ごとに、野次馬達は驚きの声を上げる。

「よし」

 朔夜はその人物が最近の人殺しの犯人だろうと決め倒そうと歩みよろうとしたとき、朔夜の肩を榴華が掴む。

「ちょいまち」
「なんだよ、犯人あっさりわかったんだから捕まえればいいだろ」
「ちょっとおかしいいよん。話しきてみよ」
「何故だ」
「あの子が犯人やら、鞘から抜かないで罪人を殺さんで、刃で斬りつけて殺すやろ」
「あっ」

 確かにその通りであった。態々一目があるからといって殺さない理由にはならない。 そもそも此処数日の短期間で罪人を殺しまわったのなら、今さら此処で躊躇するとは到底思えなかった。
 それこそ国に住んでいるのであれば、一目があれば犯罪が露見するために、人前で態々殺すような真似はしないだろう。
 けれど此処は罪人の牢獄。元々罪人で、それを守る法は存在していない。

 罪を新たに犯そうとも、此処は罪人の牢獄でしかない。


「君つよいなぁーん」

 榴華が能天気な声で声をかける。
 一瞬だけ刀を強く握りしめた人物だが、その毒毛のない声と手をふってやってくる人物にひとまずは警戒を解いたのだろう、刀を元の位置に戻していた。

「何だ?」

 怪訝そうにその人物は榴華を見る。

「君名前はーん? 自分は榴華いうん。よろしゅー」

 独特な口調に一瞬だけその人物は眉を顰めたが

「郁(かおる)だ」

 名前を名乗る。相手が先に名乗ったから自分も名乗ったにすぎないのかもしれない。

「郁ね、よろしゅー、こっちはサクリンと篝火はん」

 後ろから続いてきた二人を紹介する

「オイ、俺は朔夜だ、勝手に名前を変えるんじゃねぇ」
「ええやーん」
「処で私に何か用なのか?」

 二人の会話が長引きそうだと判断した真っ黒の人物――郁は、すぐに会話の間に入り込む。
 正解だと心の中で篝火は郁を称賛する。榴華と朔夜の言い争いは実際長い。


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