零の旋律 | ナノ

V


 三人は街を出歩く。

「で、何か他に探す条件はあるのかよ」

 何もなければそれこそ罪人の誰かが殺されるのを待つしかない。この広いとは言えないが決して狭いともいえない、第一の街の中であてもなく探すのは骨が折れる。

「新入り」
「何故?」

 篝火が榴華に問う。

「簡単よん」

 いつの間にか榴華の口調は元に戻っている。篝火はそのたびにいつも素の口調でいれば下手に相手を煽ることもないだろうにと思いつつ口にはしないで、心の中だけで指摘する。

「だって、ここ最近急に出てきたんもん。だから、ここ最近でおっぱじめるなんて、ここ最近きた罪人でしょって話しよん」
「なるほど」

 新入りともなれば、目安をつけるのは容易になる。此処数日新たにきた。つまり街をよく放浪している篝火と、街の支配者である榴華、古参の朔夜其々が見知らぬ罪人― この牢獄に来たばかりの罪人を探しだせばいいだけなのだから。
 街を散歩感覚で周囲を放浪すればいい。
 三人は特に会話もなく進んでいくと、罪人の牢獄ではよく見なれた光景に出合う。
 柄の悪い男三人に一人の人物が絡まれていた。
 若い人物、朔夜と同い年くらいだろう。
 ひと言で表すなら黒もしくは闇。
 顔以外露出しない形で全身を黒い服で覆っている。髪の毛も瞳も黒く。漆黒。
 ローブのような服装と、黒いズボン。腰には黒いリボンがついている。
 そして腰には黒い二刀の刀が紐で結ばれている。何もかも黒い人物だった。

「いきなりなんだ! お前らは」
「あぁ!? こっちは金よこせって言ってんだよ」
「かつあげか? 下らん。なら道を通せ」
「はぁ!? ふざけんな」

 そんな会話をよそに榴華たちは

「うわーサクリン二号がいるよ、火に油注いでるやん」
「いや、そこじゃなくてさ」
「わかっているよん、そこの真っ黒黒りん、新入りや」

 黒い人物は榴華には全く心当たりがなかった。それはつまりここ最近この牢獄に来た罪人ということになる。三人は黒い人物がこれからどのような行動に出るのかを見る為に、傍観をしていた。
 この街では野次馬も結構日常茶飯事。実際、男三人と真っ黒の人物の周りには少し遠巻きに野次馬が数名いる。


「下らないっ、私に関わるな」

 冷たい口調で真っ黒の人物は突き放す。それと同時に真っ黒い刀を一刀手にして男三人を鞘から抜かずに鳩尾に刀を押し、倒す。


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