Y 「何?」 榴華は朔夜を無視することにしたようだ。まぁその方が話は進むだろうから利口な選択だ。 「水渚(みぎわ)っちは最果ての街にいったみたいよーん」 「へぇ、そうなのかって最果ての街って無法地帯の頂点なんじゃねぇの?」 そんなところに部下もなく一人でいってもいいものだろうか、赤の他人のはずなのに心配になる。 「まぁ大丈夫っしょー。水渚(みぎわ)っち、かーなり強いやろ―し」 「まぁ強いとは思っているが、実際戦ったところ俺は見たことないから知らないぞ」 水渚以外の部下とは戦ったが本人は最初から戦意がなかった。 荒くれ者どもを占めていたのだから、それなりの実力はあるだろう、なければ粗暴な罪人たちが水渚の命令を素直に聞くとは到底思えない。 「水渚っちは滅茶苦茶強いよーん。今度暇があれば戦ってみればどう?」 相変わらず口調は軽い、だか俺は水渚と暇があったとしても戦うつもりはない。戦ってはいいけない、そんな気がしてならないからだ。 俺が首を横に振ると。そうかといって、榴華はそれ以上それについては何もいってこなかった。 「まっ、これで柚に手を出す馬鹿ものどもは一層できてすっきりしたわーありがとなっ」 「別に、特に何もしていないだろう」 本当に特に何もしていない。予め榴華がいっていた打倒榴華組織本拠地までいって数名の罪人を倒しただけにすぎないのだから。 ん? そこで俺はあることに気がつく。 あの程度の実力者、しかも一番強いと思われる水渚は最初から戦意などなかった。ならば柚霧が一緒にいたところで榴華の実力なら柚霧を守りながら戦うことなど簡単ではないのだろうか。 そして榴華自身がそのことにきがついていないはずがない。 榴華が打倒榴華組織本拠地を知っていたのだから。 何かはめられた気がしてならない。 一体何を考えて俺を利用したのかまでは頭は回らなかったが。 何か引っかかっていたことは未だに解消されていない 「なぁお前はなんで俺を利用した?」 だから直接本人に聞くまで 「特に深いわけはないんよ。それに水渚っちが戦意あるかないかなんていかないとわからんやろ? 万が一にも柚を巻き込むわけにはいかんかった、それだけよ」 「水渚が戦ったら柚霧を巻き込む可能性があったと?」 「そうよん、それだけ水渚は強いんよー。なんせ」 榴華はそこで区切る。 その先は予想がついた。予想がついたが俺は何も言わなかった。手盛りを食わされたな。 榴華も俺が予想ついたことに気が付いている。そして気がつきながら口に満面の笑みを浮かべる。 「俺が来る前の第一の街支配者だからな」 [*前] | [次#] TOP |