零の旋律 | ナノ

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 俺と水渚(みぎわ)は朔夜を追いかけるように走りついていく。
 水渚自身は榴華の前から姿を消すという選択肢もあった、むしろそうするのが当然の選択肢をあえて蹴り榴華の元に向かう。自分が主犯だと証明するために。

 しかし榴華の元にいったとき榴華は水渚が主犯じゃない冗談はいらないと一蹴した。 榴華は気が付いているのだろう、本当に水渚が主犯じゃないことに。
 確かに人を集めたのは水渚だろうそういった意味では主犯なのだろう
 だが水渚は柚霧を襲う命令はしていない。そう確信が持てた。恐らく臣下が榴華より柚霧を狙った方がいいだろうと判断して勝手に行動したこと。

 だから榴華は水渚にたいして何もいわなかった。そしてそれが残酷なことだと気がつきながらも。

 誰かに許されないことが欲しい水渚にとって、何も言われないことは、許されることは水渚を苦しめ続けるだろう。だから榴華はあえて何もしなかった。
 そんなことを考えながら水渚がこれからどうするのか俺は気になった。

 水渚は、名前を捨てた王様は俺と似たもの同士だ。
 水渚は榴華の元を行き先を告げずにさった。まぁまた会えるだろう、此処は死の牢獄、死を待つだけの奈落外に出ることは二度と出来ない罪人を閉じ込めておくための牢獄。

 そこに生きている限り、何れ再び廻りあうだろう。



 何だかんだあり、夜になったために今晩も朔夜の自宅にとまることになった。朔夜は用事があるとかで一足先に自宅に帰っている。
 俺は特に何もすることがなく、手持無沙汰な状況で街の景色を眺めながら朔夜の処まで向かう。
 夜だというのに喧騒は響き、昼間と変わらない。
 時々絡んでくる罪人がいたが返り討ちにした。今日は何もしたくない気分だ。


 朔夜の自宅について階段を上る。呼び鈴はならさない。鍵をかけていないことがわかっているから、勝手に侵入する。親しき仲にも礼儀ありというが、俺と朔夜は親しくない。
 いや、親しくないからこそなおさら礼儀をわきまえなければいけないのだろうが、朔夜相手に何かをするつもりもない。

 朔夜の自宅の廊下を歩いていると香ばしい香りが周囲に立ち込める。


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