零の旋律 | ナノ

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 生きていることを、お前だけが死んで俺が生きていることをお前は恨むだろうか、

『自惚れ自惚れ片惚れ岡惚れだよ』

 そう俺に言ってくれたお前は今の俺を見たらなんていうのだろうか、
 俺には知ることは出来ないけど。



「あははははははっはははははっ」

 笑い声が、狂った笑い声が辺りを響かせる。

「ほ、ほんとうに、ほんとうにばかだっ、私は馬鹿だっあはははははっ」

 ひとしきり笑ったら満足したのだろう、笑い声は次第にやんでいく。
 その代わり名前を捨てた王様の頬を伝う雫が見えた。


「名前を捨てた王様、名前は?」
「君は?」
「俺は――」

 此処では身元を明かさないために偽名を使うか名前だけを名乗る
 それがこの街のルール

 そんなこと知ったこっちゃない。

「凌叉篝火(しのぐさ かがりび)」
「私は……水渚(みぎわ)でいいや」
「いいやって」
「私は名前を捨てた。私の今の名前は水渚さ」

 名前を捨てた王様はこの日新たな名前を得た。

「……行尸走肉にはなるんじゃねぇーぞ」
「それは、お互い様でしょ」

 ……実は、不倶戴天の意味も知っていたんじゃねぇか?


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