零の旋律 | ナノ

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「じゃあ、篝火頼むよん。褒美は前払でこの街のこと教えてあげるよん」

 別に褒美目当てではないのに、それにどうせ大した内容ではないのだろう?

「罪人の牢獄には四つの街があって、そのうち三つの街は最初の街って呼ばれてるん。其々特色はあるよーん。で四つ目の街最果ての街はこの牢獄で一番危険な場所だからん滅多なことでは近づかんほうがええよ。それとこの街では滅多に名字はいうやつはおらん」

 街が四つもあったことには驚きだ。この街は……いや、この罪人の牢獄は小の虫を殺して大の虫を助ける……か。政府が何か関わっているのだろうどうせ。じゃなければ街等出来ないのだろうし。
 本当に被害者は泣き寝入りだな


「それとーん、柚に手を出したら俺がお前をぶっ殺すからよろしくーん」

 真面目と不真面目を組み合わせるな、その本気具合が俺の笑みをひきつらせる。

「あぁ、まぁもっと詳しいことは色々話すわ、時間あるやろうし。まぁいろいろ あるけど地獄も住処やで」
「へぇ……勉強したのか?」
「よくわかったなぁ」

 感心したふりをしているが、どうせ感心なんかしていないのだろう?
 演技が下手だ、その程度なら俺だって見破れる。

「負けず嫌いだな」
「そうかなぁ?」
「あぁ」

 人知れず、笑みが零れる。自分でもよくわからないが、鏡を見たらさぞあくどいのだろうな。
 脅迫されたからってのもあるけど、俺は自分が何故榴華に左袒しているのかわからなかった。


 大切な相棒を失ってもそれでも俺は生にしがみつくのだろうか……はははっ


 そうして俺と不本意ながら朔夜は榴華の命令通り、打倒榴華組織の処まで赴くことになった。
 実力が不明瞭な相手としかも気に食わない奴と組まされるくらいなら一人で行動したかったが、まだ地の利を完璧に把握していない状況で見ず知らずの場所に行くわけにもいかなかった。
 朔夜も俺と組まされたことが気に食わないのだろう、不機嫌そうな顔は普段にも増している。
 道中特に口を聞くこともなく歩いていく。


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