零の旋律 | ナノ

V


「へぇ。何したんだよお前」
「そういうお前は何をしたんだ」
「……」
「お前が何も語らないのに此方が何かをいうつもりはない。対価には対価だろ」
「別にお前が何をしたかなんて気にならねぇよ」

 不貞腐れたのだろうか。別に言いたくないような罪を犯してきたわけではないが、答える義理もなかっただけだ。

「商売往来にない商売だよ。意味を知らないなら自分で調べろ」
「はぁ!?」

 怪訝な顔をしたところを見ると、意味を知らないらしい。まぁ、この少年が知っているなんて思っていないから、態々知らないだろう言葉で言ったんだけどな。

「……」

 朔夜は無言のまま洗面台を出る。まだ僅かに髪の毛が濡れているが許容範囲だろう。 風邪をひこうが俺の知ったこっちゃない。



「で、その打倒榴華組織って一体何だよ」

 どうせ、その目的を詳しく説明するために、此処まで足を運んだんだろう。
 居間に戻った後ソファーに座り榴華に問いただす。

「んーそうやなぁ、自分が気に入らないから自分を殺してこの街で好き勝手やりたいって集団のことなん?」

 そりゃあ随分と罪人らしいこと。しかし最後に疑問形がついたような気がするのは俺の気のせいか?
 奥歯に物が挟まったような感覚を俺は感じる。

「まぁ別に構わんのよ? 下剋上いくらされようと、此処が罪人の牢獄である以上。自分に挑んでくるなら自分は相手をするよん、けどなぁ……柚に手を出す輩だけは許さない」

 どうやら、真面目になる時は素の口調になるらしいと勝手に判断する。榴華の眼光が鋭く光る。
 普段からその姿でいれば、恐怖政治も出来るだろうに。

「で、お前一人でやればいいんじゃないのか? 打倒榴華組織壊滅は」

 実力がなければこの街の支配者でいられないというのならば、榴華の実力は折り紙つきのはずだ。ならば一人でやった方が早いのではないか。下手に足手まといがいるよりかは。
 まぁ自分が足手まといになる、なんて思っていないし、そこまで謙遜するつもりもない。


「そりゃ、勿論それでもええけど、打倒榴華組織壊滅にいくんには、柚を連れていくわけにはいかんでしょ。柚に怪我をさせるわけにもいかないんから。かといって自分が出かけている間に柚に何かあったら困るわけ」

 成るほど、わかりやすい答えだ。たった一人を守るために他者を駒として扱うわけ。
とんだ悪人だな。まぁ人のことをいえる義理じゃあないが

「で、俺にはどっちをしてほしいんだ? 柚霧の護衛か、それとも組織の壊滅か?」

 別にどちらでも構わない。

「んー壊滅してきてもらっていい? サクリンと一緒に」
「だーからーってめぇはその呼び方で呼ぶんじゃねぇ」

 そういえば、榴華がこの街の支配者なら、一番偉いのは榴華だろう。朔夜の口のきき方はありなのだろうか。まぁ榴華が上下関係を気にしそうな性格には到底見えないが。


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