零の旋律 | ナノ

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「俺、どっかにトリップした?」

 目をこすっている。その後は結構定番。頬を抓った。夢じゃなくて現実だぞ。まぁ予想通りの反応有難うとでも言っておくか。

「お前の家が汚な過ぎるから勝手に片付けた文句は受け付けない。朝ごはん食べるぞ」

 そういって台所から予め作っておいた、あるもの料理をテーブルの上に並べる。

「おまっ、料理出来たのか!?」

 驚愕の瞳で此方を見ているのは朔夜だけじゃなく榴華や柚霧までもが。
 人を見た目で判断するな。いや、見た目から出来てないオーラを出しているかは知らないが。

「悪かったな」
「いや、悪くはねぇけど。人は見た目によらねぇもんだなぁと思って」

 朔夜は他人に喧嘩を売るのが得意のようだ。しかも無意識のうちに。かなりたちが悪い性格をしている。更正した方がいい。


「食べれば」

 榴華と柚霧は朝ごはんを食べてきているだろうと思い軽食を用意した。紅茶をそえる。

「美味しいです」

 柚霧がこちらに二コリと微笑んできた。やはりこの殺伐無法地帯の罪人の牢獄で癒しの存在だ。

「うわぁ、真面目に意外や、美味しい」

 色々と腹立たしい榴華の言葉。まぁ柚霧には料理の腕は負けるけど一通りは作れるつもり。

「へぇ」

 不味いのか旨いのかぐらい言葉にしろと思いつつ相変わらず見た目によらず上品な食べ方をする朔夜。食べ方は上品なくせに何故部屋が魔の巣窟だったのか非常に問いたい。


「とりあえず、お前こっちに来い」

 食べ終わったころを見計らって朔夜を引っ張り風呂場まで連れていく。
 髪の毛が寝起きでボサボサで蜘蛛の巣状態は許せない。
 洗面台でとりあえず適当に頭を濡らして髪を洗うことから始めたら案の定嫌がったので力でねじ伏せとく。
 細身な見た目と同様力は全然なかった。というか男としてこれはいいのだろうかというくらいひ弱な気もする。
 適度に洗ってから髪の毛をとかし、髪の毛を乾かす。トリートメントがあればつけたいところだがなかったので我慢。

 他人を此処まで気にかける必要は何処にもないだが、どうにもイラついて仕方ない。 イラつくよりはましだと自分に言い聞かせる。
 髪の毛は無法地帯だったというのに、怖いぐらい痛みが少ない。赤いメッシュ部分は染めているのか判断はつかないが、特に痛んでいる様子はない。
 常日頃髪の毛の手入れを欠かさない者から見たら非常にうらやましい髪質なんだろうな。
 俺自身は髪の毛に拘りは特にないが、伸ばすなら綺麗な髪の毛でいてほしいとは思う。


「終わりだ」
「随分乱暴だな」
「なんでお前に親切にしてやらないといけない」
「さぁな、こっちが聞きたいくらいだ」
「……お前年は?」
「あっ? 16だよ。もうすぐ17になる」

 一体何を犯したのだろう、気にならないではない。といっても此方もまだ二十歳未満。人のことは言えないのだろう。

「で、俺が教えたんだから、てめぇはいくつなんだよ」
「お前より二個上だ」

 計算が出来ない馬鹿ではあるまい。


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