\ 「手伝ってくれるよな?」 笑顔で言ってくる。 「……わかったよ」 「ありがとー。ってまぁ大抵こういう風にすればみーんな頷いてくれるんだけどねん」 紫電は消えていた。恐怖で相手を頷かせるという手法か。そして俺もそれに引っかかったわけね 「鬼面人を威す……見せかけで人を威す……であっているのか……」 ボソリと呟くが榴華には聞こえなかったのかやたら上機嫌で此方に話しかけてくる。 「んじゃあ、篝火はサクリン宅にとまってーて、どうせ。宿ないでしょん」 「って待て!! なんで俺ん家なんだよ」 今まで大人しく黙っていた朔夜が口を開いた。又眉間に皺が寄っている。癖なのだろうか。 「ええやーん、一人しかいないのに結構広いいい家に住んでんやから」 それにしても榴華の口調はどっかの方言を適当に混ぜた感じがしてイラつく。 「いや、よくない」 「ほらほら、もういったいった」 なんだか知らない間に追い出されてしまった。 紫電を見てからだろうか、妙に逆らう気分ではなくなった。 時間は結構たっただろうというのに、地下にある罪人の牢獄の雰囲気は変わらない。 夜だろうが昼だろうが。 この牢獄では地場の関係か普通の時計では正常に作用しない。その為罪人の牢獄で使える時計を時計職人が作っている。 それを知ったのは最近だが。腕に巻いている盗んできたこの街で使える時計で時刻を見ると夜だ。 朔夜の家に行ったら寝る時間だな。 朔夜は人を止まらせたくないのだろう、不貞腐れた表情で前を歩いている。途中でぶつかりそうになった罪人が何人かいたが、全部睨んで退けている。 戦ったところを見たことはないが、朔夜自身それ相応のてだれなんだろう。 「へぇ、本当に広いんだな」 他の建物と大差のない大きさがだが、一人で住んでいるとなれば結構な広さだ。第一一戸建てだし。 二階建てになっており、部屋自体は二階にあるのかコンクリートでできた階段を上っていく。建物は薄い灰色をしている。窓はあるが、閉めっぱなしにカーテンがかかっていて、窓から部屋の様子がうかがい知ることは出来ない。 「ったく、本当にとまんのかよ」 「お邪魔します」 「はぁ」 本人の前でため息をついたり悪態をついたりとどうにも自分の感情に素直だな。 [*前] | [次#] TOP |