零の旋律 | ナノ

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「それにしても、柚を狙うなんて馬鹿がまだいたんだな」

 食べ終わったころ朔夜が口を開いた。
 柚霧は洗い物をしに台所にいる。柚霧がいなくなったタイミングを見計らったのだろうか、案外空気が読める奴だったか。

「それは、最近結束されたんよ、打倒榴華って旗を掲げた馬鹿な輩がね」

 口調は軽いが榴華の瞳には殺気が宿っている。あの時自分の後に無音で現れていたことといい、榴華は柚霧のことになると態度が変わるようだ。
 だから、柚霧がこの街で今まで生きてこられたのかとある意味納得できる。

 榴華にとって柚霧は天にも地にもかけがえない存在なのだろうか――


「へぇ、だから榴華じゃなくて柚霧狙っていんのかよ。馬鹿だな」

 この街で榴華に勝てるわけないのに、そういっているように感じた。

「でさ、サクリン。退治手伝ってくれん?」
「やだ」
「酷っ、偶には手伝ってくれたっていいやん」

 この通りと手を合わせる仕草が何とも胡散臭い。

「篝火も手伝ってくれん?」

 こっちに視線をずらすな、そう思いながらも

「手伝って何かメリットでもあるのかよ」

 面倒なことはごめんだ。それに俺とこいつらには特に何もかかわりがない。
 見知らぬ人を助ける程俺はお人よしじゃない。

 本当に大切な人を助けられなかったのだから――


「……」

 榴華は黙って視線を外そうとはしない。何か考え事をしているようだ。
 策を講じる姿が似合わない。

「篝火はこの街にきたばかりなんだよな?」
「ん? あぁ」
「なら、自分のお願い聞いてくれたら色々保証するよん」

 餌でつるわけか。

「この街でのルールやら、何やら新人は知らないと色々きついよん」

 ニコニコと笑顔で見られても。

「別に……どうでもいい」

 死ぬのならばそれで構わない。どうせ相棒はいないのだから。

「なんや、自分自暴自棄な罪人だったん?」

 別に自暴自棄なつもりはない。いや、ひょっとしたらそうやって否定しているだけなのかもしれない。

「……」
「まぁ、どうでもええけど。自分手伝ってな」

 突如、刹那という響きが合いそうなほど、今まで榴華の周りには何も存在しなかったはずなのに、紫色の光が周囲に具現し榴華の回りを包む。

 触れてはいけない――
 紫色の光――紫電を見た途端、何か触れてはいけないような、嫌な悪寒が体中に走る。

 一体何者……。


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