X 「何」 「お前お節介か?」 別に俺は温厚篤実な性格はしていない。 売られた喧嘩は買うぞ。特に今の俺はな 白髪の少年は相変わらず不機嫌さを隠そうとはしない。そのうち眉間の皺が定着してとれなくなるのではないかと思う。まだ若いのに。 八面玲瓏そうな少女とは違って、この少年は色々とありそうだ。まぁ主観でしかないが。 「朔夜さん、あまり煽らないでください」 すると少女は白髪の少年と知り合いなのか、名前を呼ぶ。丁寧な物腰は益々この牢獄には不釣り合いだ。 「柚霧……別に煽っているつもりはないんだけどよぉ」 少女の名前は柚霧で態度の悪い少年の名前は朔夜というのか、と一応頭の中に記憶しておく。 「なにしてーん」 またきた能天気男。 しかし声の出所がおかしい。聞き間違えでなければ俺の後、それも真後ろから聞こえる。 恐る恐る振り返ってみると、眼前に男がいた。 何時の間に―― 驚愕の顔をしていると、笑いながら握手を相手が求めてくる。 「自分、榴華(りゅうか)っていうん、よろしくねん。柚を助けてくれてありがと―ね」 男――榴華も柚霧の知り合いなのだろう、それにしても随分馴れ馴れしい。 「自分名前はー? せっかくこの同じ街にいるんよ、仲良くしよーよん」 「……四海兄妹を推奨しているような奴にはどう見ても見えないんだが?」 「しかいきょーだい?」 意味が通じなかったらしく榴華は首を傾げている。まぁ昔の俺なら俺も同じように首を傾げただろうな。胸が一瞬痛むような錯覚を覚える。ちらつくはあの時の最期の笑顔。 「人は誰でも兄弟のように愛し合うべきとか、そんな意味だ」 とりあえず癖で教えてしまう。 「自分詳しいなぁー」 「別に」 「まぁそれにしても自分ようみているねぇー」 褒めているのか人の肩を馴れ馴れしく叩く。手で払うと残念そうな顔をする。喜怒哀楽がわかりにくいやつだ。 喜怒哀楽をわかりやすそうに表現していて、それでいてそれが本心ではない。 表情でわかる。 [*前] | [次#] TOP |