零の旋律 | ナノ

X


「何」
「お前お節介か?」

 別に俺は温厚篤実な性格はしていない。
 売られた喧嘩は買うぞ。特に今の俺はな
 白髪の少年は相変わらず不機嫌さを隠そうとはしない。そのうち眉間の皺が定着してとれなくなるのではないかと思う。まだ若いのに。
 八面玲瓏そうな少女とは違って、この少年は色々とありそうだ。まぁ主観でしかないが。

「朔夜さん、あまり煽らないでください」

 すると少女は白髪の少年と知り合いなのか、名前を呼ぶ。丁寧な物腰は益々この牢獄には不釣り合いだ。

「柚霧……別に煽っているつもりはないんだけどよぉ」

 少女の名前は柚霧で態度の悪い少年の名前は朔夜というのか、と一応頭の中に記憶しておく。

「なにしてーん」

 またきた能天気男。
 しかし声の出所がおかしい。聞き間違えでなければ俺の後、それも真後ろから聞こえる。
 恐る恐る振り返ってみると、眼前に男がいた。
 何時の間に――

 驚愕の顔をしていると、笑いながら握手を相手が求めてくる。


「自分、榴華(りゅうか)っていうん、よろしくねん。柚を助けてくれてありがと―ね」

 男――榴華も柚霧の知り合いなのだろう、それにしても随分馴れ馴れしい。

「自分名前はー? せっかくこの同じ街にいるんよ、仲良くしよーよん」
「……四海兄妹を推奨しているような奴にはどう見ても見えないんだが?」
「しかいきょーだい?」

 意味が通じなかったらしく榴華は首を傾げている。まぁ昔の俺なら俺も同じように首を傾げただろうな。胸が一瞬痛むような錯覚を覚える。ちらつくはあの時の最期の笑顔。

「人は誰でも兄弟のように愛し合うべきとか、そんな意味だ」

 とりあえず癖で教えてしまう。

「自分詳しいなぁー」
「別に」
「まぁそれにしても自分ようみているねぇー」

 褒めているのか人の肩を馴れ馴れしく叩く。手で払うと残念そうな顔をする。喜怒哀楽がわかりにくいやつだ。
 喜怒哀楽をわかりやすそうに表現していて、それでいてそれが本心ではない。
 表情でわかる。


- 26 -


[*前] | [次#]

TOP


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -