零の旋律 | ナノ

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 俺が白髪の少年と変なやつのことが頭から離れかけた数日後。
 毎回食べ物を適当に盗んでいたが、不味いものばかり盗んでしまうらしく当たりには中々出会えない。
 見た目で判断は禁物だが、あの見た目であの味は酷い。訴えられても不思議じゃない。まぁ訴えることは出来ないだろうけど。
 どうでもいいことを考えながら街を歩いていると、一瞬夢かと疑う出来ごとに遭遇した。

 目の前には、少女がいた。

 いや、別に女がいることは不思議ではない、この街にも普通に女を何人もみかけている。ただ、人数的には男より少ないだろう。
 まぁ罪人の牢獄だしなと勝手に納得したのだが。目の前にいるのは此処にいるのが不思議……何かの手違いではないかと思えるほど普通の可愛らしい少女だった。
 何処かにあくどさもない。邪悪さもない。大人しく清楚なイメージが漂う少女。

 その少女が、何ともまぁどっかの街でも見かけそうなくらいわかりやすくチンピラに絡まれている。
 少女は困り顔だ。しかしその困り顔が何処か普通ではなかったのが、引っかかったと言えば引っかかったのだが。

 チンピラは一目で俺チンピラっていってそうなくらい見た目判断出来る。これで実は真面目な善良で趣味はごみ拾いです、なんて言われたらそこいらのチンピラにお前土下座して来いって言いたくなるな。まぁそんなことはほぼ100パーセントないだろう。
 賭けてもいい、誰に賭けるかは知らないが。空知らずにするかどうするか悩んだが、流石に目の前で目撃してしまったものを見なかった事にするのもと、声をかけることにする。――チンピラ弱そうだし。

「何やってんだよ、よってたかって」

 なんか良くある台詞。と思いつつもチンピラ三人は予想通りの反応をしてくれる。

「因みに現状は見た目通りの展開でいいわけ?」
「あぁ?」
「誰だよてめぇ」
「邪魔すんじゃねぇよ」
「あぁ、本当に予定通りの展開」

 ため息一つ。いや二つ。阿呆につける薬はないよな、全く。

「とりあえず、邪魔」

 予想通りが此処まで続くといっそ清々しい。倒すのは訳もない。
 あっという間に地面に屍三つ。いや、殺していないから屍ではないが。

「あ、有難うございます」

 毒気のない無邪気な笑顔でお礼を言われると、こちらまで思わず笑顔で返してしまう。こんな殺伐とした空間では貴重な癒し存在だなぁと密かに思っていると、効き覚えのある声が響く

「おい、金髪頭」

 名前を名乗っていないから間違えではないが、他にも沢山金髪いるだろ……いや、罪人の牢獄では見かけたことないが。


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