零の旋律 | ナノ

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「この街って、何かルールあんのかねぇ……まっどうでもいいけど」

 案の定断った途端掌を返したように襲いかかってきた。それを返り討ちにする。
 多数なら、多勢に無勢で負けていただろうが、二人ならたいして人数のうちに入らない。
 第一、 俺は今機嫌が悪いんだ。
 そんな理不尽なことを相手にぶつけながら、適当に痛めつけた後で街の中に本格的に脚を踏み入れる。

「(全く、俺は何を思っているんだか……)」



 数日後


 ボロボロになっていた、服装は取り換え今や多少の汚れはあるものの血等は付着していない。それでも身体のあちらこちらに巻いた包帯は僅かに赤く滲み痛むのだが。

「びみょーな味だなぁ」

 食べていたパンを食べきる。
 罪人の牢獄にある街。数日滞在してわかったことがある。
 何処までいっても罪人の牢獄には変わりがないといこと。
 日常的に殺人、喧嘩、強盗なんでもありだ。殺伐としている……かといえばそういうわけでもなく。どう表現するべきかわからない日常。

「今度はもっとうまいの探すか」

 ここ数日人目につかない路地裏を勝手に拠点にして行動している。
 服装や包帯等は、頂戴してきた、簡単にいえば盗んできただけだが。
 必要な食べ物も何もかも適当な建物に侵入していただいてきた。
 太陽が昇らなければ月も昇らないこの牢獄では昼も夜も大した気温差がない。適当にあしらってきた毛布一つあれば寒さに凍えることもない。
 俺を襲う目的で来るやつも早々いない。金品を持っているようには見えないだろうしな。

 それに、あったとしても大抵はこちらが先に気がつく。
 これでも耳と目はいい方だ。特に耳はな。

 第一、蛇の道は蛇だ。



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