零の旋律 | ナノ

第一話:認められなかった


 ――これで終わりだと思ったのにな


 終わりはまだ先で
 これは始まりだった



「おい、取り押さえろ!!」
「こっちだ、こっちだ」

 騒がしい騒音が掠れる意識の中で聞こえる。

「たっく、馬鹿が二人目かよっ」

 馬鹿で悪かったな。だが、もうこれでいい。
 どうでもいいんだ――
 抵抗することもなく、ただされるがまま。
 このまま死ぬならそれでいい。そうしたら何も感じなくなるだろうか


+++


 此処は何処だろうか、傷だらけの身体。痛むのを我慢して前かがみになり前に進む。一歩一歩。進む度に砂に足元を掬われそうになる。

「此処が……死の牢獄」

 噂に聞いたことがある罪人が送られる牢獄。
 底には枷も牢屋もない。ただ腐敗した大地が罪人を受け入れるだけの大地。地下に存在する空洞。
 見渡す限り広がる一面の砂砂砂。
 一瞬此処が砂漠ではないかという錯覚にとらわれる。けれど此処は灼熱の太陽が照らす場所でもない。気候も別段温かくない。
 そして、天井を見上げれば何より太陽がない。空もない。雲もない。ただ曇天とした何かが視界に映るだけ。


「此処が俺の……」

 捕まった罪人の末路。



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