W 朝日が昇るころ二人は寝息を立てて眠りについている。 その場所にもう一つの影が現れる。両手には枕を抱き、黒い、けれど可愛らしい服装に身を包んだ少女が。 泉と律が寝ているその姿に顔を和ませる。 そしてベッドの上に自分自身も飛びこむ。衝撃でベッドが沈むが、まだ幼いその年齢ではすぐにベッドは形を戻す。 「私も、一緒に寝る」 幸せな時などこの空間では短い それを少女――郁は知っている。肌で体験しているから。 だから、その短い時間を精一杯少女は大切にする。 傍らで寝ていたはずの律は物音で置きながらも寝ているフリを続け。郁のその健気な行動に頬を緩ます。 大切な存在を傷つけるものは何人たりとも許さない。 例え人類が漆黒の敵になろうとも、自らだけは味方であろう。 +++ 「泉戻ってきたよ。だから……久しぶりかな」 久々にまともに顔を合わせた親友は、昔と変わらず、善意のかけらもなく、昔と変わって髪の毛が短くなっていて、それでも、昔のままだった。 何より、律は泉の親友のままであった。決して変わらない関係。 「あぁ。久しぶり」 いくら時を経ようとも決して変わらぬ関係。 大切な大切な唯一この世界で信じられる相手。 ――この世界が、大切な存在にとって害がある存在となるのならば、俺は全てを滅ぼしたって構わない。 ――だから死なないで生きておくれ、そして、俺の隣で微笑んで [*前] | [次#] TOP |