Y 榴華は第二の街へ戻る――朔夜と千朱、そして水渚を第二の街へ一旦預ける為に雛罌粟と共に。事の顛末を話すと柚霧は笑顔で 「榴華の判断を私は応援するよ」 と告げた。 「悪いが暫くの間は蘭凛に面倒を見て貰っておけ、朔夜も問題はないのでな」 雛罌粟はとんぼ返りのように第一の街へ再び足を運ぶ。雛罌粟は榴華も疲れていると判断し、休ませる名目でおいてきた。 一番被害が酷い場所へ赴くと栞が呆然とした姿で立ちすくんでいた。 「栞お主か」 雛罌粟の声に我にかえり、雛罌粟の方へ駆け寄り肩を掴み揺らす。 「何をするのじゃ」 「ちょ雛ちゃん。一体何があったんだ?」 「我はお主より年上じゃ」 「そんなことはいいから。なんで俺がいない数時間の間に廃墟と化しているんだ!?」 こんなことなら一時も街を離れるべきじゃなかったと。朔夜たちの姿が見えないが無事なのか安否が気になり、いてもたってもいられない。 「朔夜達は大丈夫だから安心せい」 「そっか、それなら良かった。事の顛末を教えてくれる?」 「あぁ」 雛罌粟はそして告げる、何が起きたかを。水渚の事を正確に自分がみたままに。 そして榴華が水渚に勝ち、最終的に第一の街支配者へなってくれることになったことを。 「結局朔は支配者になる道を選ばなかったんだね」 「……いくら朔夜と言えども今の状態の朔夜では無理じゃ、そして何より朔夜には仕事が出来たからの」 「千朱が目覚める術を研究すること」 「そうじゃ、ならば支配者になるよりはいいと思う。もっとも我とて榴華が成らぬといったら朔夜に任せるつもりじゃったがの」 それが最善の方法だから。少し研究の時間は短くなるが、それでも朔夜は断らないだろう。 自ら決死の覚悟を決め、支配者へなったはず。 「まぁ当分は我が支配者を兼任するわ、そうでもせんと統制が全く取れぬだろうからの」 「あははっ、だろうね」 「栞、お主も少しは第三の街を顧みるんじゃ。この街と同じような状態にしては行けぬぞ」 「……既にしちゃった気もするけれどね」 朔夜が嘗ての第三の街支配者に誘拐された時、栞は怒りのままに罪人達を虐殺した。 その結果極端に減った第三の街の支配者を雛罌粟は暫くの間勤め、ある程度復興したところで栞に支配者を任せた。 「お主が反省していない事を責めるつもりはない。だが、全ての人が朔夜の誘拐に関わっていたわけではないことを忘れるではない」 栞はその時の事を後悔していない。誘拐に関係ある罪人も関係ない罪人も殺したことを、朔夜に危険が及ぼす存在なら滅ぼしてしまえばいい――と本心から思っているから。 「うん。そうだね。俺はじゃあ第一の街は雛罌粟に任せて、第三の街にいますか」 「その方がお主とて有益じゃろ?」 「うん、雛罌粟ってホント。思考が早いよね、惚れ惚れするわ」 第三の街は研究者や術者が集まる街、そこを昔のような状態まで戻せば、研究から何か千朱を目覚めさせる方法が見つかるかもしれない。 「我を褒める暇があるなら怱々に行くとよい」 「わかった」 栞は再び消え第三の街へ戻る。 「さて、我は是から忙しくなるな」 まずは第一の街をある程度の秩序まで戻し、その後榴華に街を支配させること。 「やることが沢山じゃの」 水渚が破壊した第一の街を見渡しながら雛罌粟は是からの事を思案する。 end [*前] | [次#] TOP |