零の旋律 | ナノ

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「具体的には何をするのじゃ?」
「術の、研究かな? 俺一応術者だし」
「それがいいかもの、得意分野で見つけ出すのだ」
「そうする」

 朔夜は緊張の糸が途切れたのか。そこで倒れる。雛罌粟はそれを受け止めようとして、いつの間にか近くにいた榴華が朔夜を受け止める。
 肩には千朱を担いでいる。

「お主、強いな」
「戦闘能力には自信があるんだ」
「そうか……お主、第一の街の支配者をやらぬか?」

 突然の誘いに榴華は思わず千朱を落としそうになる。

「千朱を落としそうになるではない。お主は第一の街支配者水渚を倒してしまった。お主が適任だと我は思ったのだ」
「俺は、第二の街で柚霧と平穏に暮らせたらって思うよ」
「……そうじゃの。お主にとってはそれが何よりの幸せ。ならば忘れてくれ」
「待て、そうしたら第一の街はどうなる?」

 自分が口を挟むことじゃない、そうと承知しても尋ねずにはいられなかった。
 今回の発端の一面を垣間見てしまったら問わずにはいられない。今の水渚は柚霧と出会えなかった時の自分だ。

「……影でやろうと思っていたから仕方ない、我が暫くの間第一の街と第二の街の支配者を兼任し、事が落ち着いた頃合いに朔夜にやらせようと思う。それが最善じゃ」
「そこまでして街を守りたいのか?」
「誰にだって守りたいものはあると思うぞ。朔夜にとって大切なのは街と、友達じゃ」
「……」
「流石に我とて二つの街を支配し続けるのは手に余るからな」

 水渚と直接相対しなかった理由を今榴華は理解した。
 雛罌粟の結界術の凄さは片鱗を先刻から垣間見ている。しかし戦闘面に関してはどうだ、攻撃をしている姿を見ていない。戦えないわけではないのだろうが、秀でているわけでもない、と榴華は判断した。

「……やるよ。俺が支配者」
「しかしお主は柚霧がおるじゃろう? こういってはあれだがお主がいくら第一の街を支配したところで第二の街のようになることはない。あれは既に特色と化している街じゃ」
「わかっているよ。けど柚がこのまま放置していたら嘆く」
「はは、お主もまた面白いの」

 雛罌粟は一度目を瞑る。

「わかった、お主に任せよう。だが、当分は我が支配者を兼任する。此処までの状態に陥ればちょっとやそっとじゃ戻らぬだろうからの」
「そうしてくれると助かる。新参者過ぎて良く分からないからな」
「なら、少しでもお主の力を周囲に見せつけておくとよい」
「何故だ?」
「お主の力が強いとわかれば柚霧に手を出してくる輩は減る、ということじゃ」
「成程、それはいいや」

 柚霧が過ごせる空間が出来たら、その時は柚霧と共に此処に来ることを榴華は決めた。


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