零の旋律 | ナノ

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「まぁほんの少しいた、だけじゃわからねぇよな。元々此処は罪人の牢獄だし、最果ての街ならまた別、なんだけどな。まぁあそこは論外だからいいとしても」
「時々出てくる最果ての街は一体どんなところなんだ?」
「最果ての街は最も罪人らしい人が集まる場所だ。罪人ですら近づきたいと思わない死地」
「……」
「あそこはそれが特徴だから、そんなんでも街として機能するけれどな、第一の街はそうじゃない。だからこそ支配者によるある一定の統制は必要なんだ」
「罪人の牢獄も牢獄で問題があるというわけか」
「あぁ」

 朔夜は現状を話す。当事者と言っても過言じゃない朔夜だからこそ細部を話せる。

「第一の街支配者水渚(みなぎさ)はある事件で放心状態なんだ。何も統率もあったもんじゃない。だからこそ罪人達が好きかってやり初めて、崩れかけているんだ」
「あの時も思ったが朔夜は変っているな」
「変っている……?」

 何処が変っているのかわからずに首を傾げる。

「他の罪人とは別の、まるで罪人じゃないみたいだ」
「――それを言うならお前らだって似たようなもんだ」
「……」

 榴華は黙る。罪人ひとくくりに出来ないことは榴華自身がわかっているからだ。隣にいる柚霧をそっと見る。

「雛罌粟、頼めるか?」

 再び朔夜は話を戻す。

「……次は最果ての街の代理も務めることになるのだろうかの」
「コンプリートしちゃえば?」
「断るわ、最果ての街は我では荷が重すぎる。蘭凛、暫くの間我の留守をまた頼めるか?」
「勿論ですよ」
「お任せを」

 二つ返事をした蘭凛に、雛罌粟は第二の街を任せる。第二の街は秩序あるため、雛罌粟が暫くの間留守になったところで揺るがない。
 蘭凛に任せておけば問題もないと雛罌粟は信頼を置いている。

「榴華、柚霧。悪いが後のことは蘭凛にお願いしておいて貰えるか?」
「大丈夫です、わざわざすみません」
「有難う、雛罌粟」

 二人は其々の形でお礼を口にする。感謝してもしきれない程だ。
 罪人の牢獄へ堕とされた時、死を覚悟した。柚霧と離れ離れになった時は胸が引き裂かれる思いだった。けれど朔夜や雛罌粟、栞、蘭凛の計らいでもう一度こうして一緒に生き伸びる事が出来る。

「では、善は急げだ、参るか」
「あぁ」

 朔夜と雛罌粟は部屋を後にして第一の街へ向かう。

「栞は、有力な罪人を……崩壊を早める可能性のある罪人を殺しておるのじゃな?」

 栞が期限を引き延ばす。そのことから雛罌粟は推測出来ることは一つ。朔夜も頷く。栞の確認をとったわけではない、しかし現状はそれしかないと痛感している。

「我は殺しを好まぬが……まぁ我が引きうけるといった以上適任者が見つかるまでは我が何とかしよう」
「水渚は」
「水渚を第一の街支配者に据えたままで我は影ながらやるわ。水渚の影の代行といったところじゃな。我は第二の街の支配者だ、公には出来ぬだろう」
「それもそうかもな」

 支配者不在の街ではない。支配者が存在する街。だからこそ雛罌粟は表立って行動することを避けた。



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