零の旋律 | ナノ

V


 第二の街は昨日来た時と変らない状況。この街は雛罌粟が治安維持を務めている限り安全だろう、そう思っている。
 それほどまでに、支配者の影響力は強い。
 第三の街だけは何とも云えなかったが。第三の街は研究を好むような研究者や学者が多く集まっている街だった故の特徴ともいえたが。
 雛罌粟の家に辿り着いて。扉を開けると、昨日出会った榴華と柚霧が一緒にソファーに座って雛罌粟と談笑していた。
 雛罌粟が朔夜に気がついて、手招きをする。
 榴華と柚霧が一緒に座っているので、自然と朔夜は雛罌粟の隣に座る。

「朔夜、昨日ぶりだな」

 初めて出会った時の憔悴したような表情は榴華からは見えなかった。大切な存在が生きているとわかって、傍にいれて、それだけで嬉しく、心が安定したのだろう。

「あぁ」
「で、お主今日は何のようだ?」

 雛罌粟は二日続けてやってきた珍しい来訪者に要件を問う。

「あぁ……栞の見立てじゃ、後一カ月も持たないらしい。栞が出来る限り期限を引き延ばそうとしてくれているが、いつまで持つかわからない」

 現状を報告する。これ以上水渚――を待っていられなかった。そこまでもう来ている。
 榴華と柚霧は席を外そうとするが、朔夜がそれを止める。

「別に聞いていても困るような立ち入った内容じゃねぇよ。それにこの街に住むなら色々知っておいたほうがいいだろう?」

 榴華と柚霧は半分立ち上がっていた腰を再び下ろす。

「お主はやらぬのか?」

 何をと、問うまでもなかった。昨日も栞に言われたことだ。

「俺には無理だ」

 そこに蘭凛も加わる。もっとも二人は座らないで立っているが。

「俺らがこんな身体じゃなきゃ、代理で適任者が見つかるまでの間やっておいてもよかったんだけどな」

 蘭凛の現在の姿は昨日とうってかわって、十歳になっているかなっていないかの瀬戸際の年齢。その見た目が昨日あった人物と似ているだけで、初めてあったものなら兄弟か何かと勘違いするだろう。昨日の蘭凛の姿も本当であって、この姿も蘭凛にとっては本当なのだ。
 時間によって姿が変わる――そう、蘭凛は初めて自分たちとであった榴華と柚霧に説明をした。

「第二の街だから通じるってもんもあるし……雛罌粟、代理で出来ないか?」

 雛罌粟に代理を頼めないか、そう思い朔夜は足を運んだ。雛罌粟ならばと微かな希望を抱き。

「我か。我としては代理で良ければやらぬわけではない。が、代理は所詮代理でしかないぞ? 我は攻撃術系統は余り得意ではないのでな」
「それでも、構わないよ。いないよりいた方がずっとましだ」

 雛罌粟なら安心して街を頼める。だからこそ朔夜は真っ先に雛罌粟に所にきた。もう時間がない。

「第一の街は大分深刻な状況なんだな」

 榴華が率直な感想を漏らす。第一の街の現状は第二の街とは比べ物にはならない。けれど罪人達のたまり場、と考えてしまえばそこまで悲惨とも考えられなかった。


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