X 「榴華、何故此処に……!」 再び会えた事よりも何よりもまず先に柚霧には聞かなければならない事があった。 何故榴華が罪人の牢獄にいるのか、それを意味しているのは一つだけ。 「柚を、柚を傷つけるものは俺が許さない」 それが明白な答えだった。 「でも、殺してはいないよ。殺したら、柚が悲しむから」 榴華は酷く一途だった。柚霧は榴華をそっと抱きしめ返す。 「柚、生きていてよかった」 榴華は何度も強く柚霧を抱きしめ、生きているそのぬくもりを肌で感じる。 「また、榴華にあえて嬉しい」 +++ 「なんか青春しているなぁ」 「だなぁ」 それを隅で蘭凛の双子は眺めていた。 「若いのぉ」 そしてどう見ても榴華より年下のはずの雛罌粟の言葉。 「やっぱり、此処に来たのか。生きているなら此処にいると思ったよ」 朔夜の言葉。 しかし、雛罌粟は首を横に振る。 「柚霧を助けたのは我ではないよ」 「んじゃあ、蘭凛?」 朔夜が蘭凛の方を見るが、蘭凛の首を横に振る。 「栞だ」 「!!」 「栞が、流石に自分が女の子を拾ってくるのはって、態々我の元まで届けに来たんだ」 「へぇ、そうだったのか」 「えぇ、そうです。倒れていたところを助けていただいたのです」 雛罌粟と朔夜の会話が聞こえていたのだろう、柚霧が補足する。 榴華はようやっと柚霧を離した。その様子に雛罌粟は二人に再び座るように促した。素直に従い、榴華と柚霧は隣同士に座る。 お互い生きていて嬉しいのだろう。穏やかな表情が朔夜と雛罌粟には見て取れた。 「栞って?」 榴華が聞きなれない名前に首を傾げる。 「栞は、第三の街の支配者だ」 「随分なんかすごいのに助けられたんだな、柚」 「みたいですね」 「あれ? 柚しらなかったのか?」 助けられたくらいだから、相手が第三の街支配者だと知っていると思っていた榴華はきょとんと、柚霧を見る。 だが、それに答えたのは柚霧ではなく、朔夜だった。 「栞は、自分から支配者だって口外しないよ。口外しないといけない時と、相手が自分のことを知っているとき以外は、滅多に支配者だって名乗りを上げないから、結構栞が支配者だってこと知らない輩も多いぞ」 「へぇ、変った人もいるんだな」 普通、権力を持ったものならば、その権力を誇示したがるのではないかと。 「まっ、変わりもんでもあるさ」 「でもいい人でしたよ」 柚霧がこの場で場違いの発言をする。朔夜は僅かに苦笑する。 「いい人って此処は罪人の牢獄なんだが」 「罪人だからといって、全員が全員悪人とは限りませんよ」 柚霧の言葉に朔夜は、まぁそうだなと曖昧に言葉を濁した。 確かに此処は罪人の牢獄、“どんな理由”があれ、法を犯した者が送られる死の大地。奈落の底。全ての人が善人と限らないように、全ての人が悪人とも限らない―― [*前] | [次#] TOP |