V 朔夜の後を歩いていると、どんどん街外れに歩いていく。そして街の外に出た。街から出るとは思っていなかった榴華は慌てて朔夜に話しかける。 「おい! 街の外に出たぞ!?」 「いいんだよ。お前が散々探しまわったのなら……生きているとしたら、もうあの街にはいねぇだろ。なら、別の街にいくだけだ」 「は?」 「……この牢獄には四つの街があるんだ。あそこは第一の街、柚が生きていると仮定するなら街にいることが絶対条件だ、毒に関係なくな。それなら、第二の街か、第三の街にいる。その中でも一番生きている可能性が高いのは第二の街だ」 「なんで、街がたくさんってそれはいい。街の個数があっていないが?」 四つの街があるといった、だが、朔夜が生きている可能性として上げた街は二つ。先ほどまでいた街を加えて三つ。一つ足りない。 「生きている可能性っていっただろうが、あの街にはいねぇよ。最果ての街にはな」 「最果ての街……」 「あそこに、大人しい戦闘能力のない少女がいたら、百%生きていない。それに、最果ての街は、三つの街のどれかを経由していく街だから、普通最初から最果ての街に辿り着くことはない」 「そうか」 榴華は、この少年についてきたことを後悔しなかった。この罪人の牢獄について詳しい少年がいるならば、柚霧が生きていそうな可能性を探し回せる。 まだ、絶望だけではない。 「で、第二の街が一番可能性は高い。あそこなら、大人しい戦闘能力零の少女でも生きていけるような場所だしな」 「そうなのか?」 「あぁ、あそこの街の支配者――雛罌粟ってやつが、不要な殺し合いや、争いは好まないから、一番秩序がとれている街なんだよ」 「柚……生きていてくれ」 その街に辿り着いたのならば、生きているような気がしてならなかった。 自分にとって一番大切な存在。 生まれながらにして、他の人々を凌駕するような力に、人を傷つける力に他人は畏怖して、自分を恐怖の対象としか見なかった。決して榴華に近づこうとしなかった。そんな中で唯一自分に優しく手を指し伸ばしてくれて、そして微笑みかけてくれたあの笑みは今でも忘れない。 ――生きていてくれ 「……」 切実に柚霧の生存を願う榴華を横目に朔夜は、何か、自分でもわからない感情が渦巻いていた。 何故、榴華の手助けをしようとしたのかその疑問が未だに解けない。単なる気まぐれとは朔夜は考えていない。自他ともに認めるめんどくさがり屋である自分が、気まぐれ街から離れてまで人探しを手伝うとは思えなかったからだ。 「ありがとう、朔夜」 突然お礼を言われた。そこのことに驚いて榴華の顔をみる。今にも泣きそうな顔をしていた。まだ、柚霧が生きていると判明もしていないからだ。 「なんでだよ?」 「朔夜に出会わなかったら、俺は力尽きるまであの街でだけ柚霧を探していただろうから、他の選択肢を知らずに」 「選択肢を自分で増やしたのはお前だ。お前が一日中、柚を探しまわろうとしていなかったら、俺はお前に声なんてかけねぇよ」 「そうか」 「あぁ、だからお礼を言われる筋合いはない、単なる気まぐれだ。だから気にするな」 気まぐれではないと心の中で確信していても、気まぐれと答える。 榴華は朔夜に心の中で再びお礼を言う。 柚霧への望みを繋げてくれた人。 [*前] | [次#] TOP |