「これが、夢華の力か」
エンちゃんが何かを呟いた。 そう、夢華の力 夢華の右目に宿る紅の眼は魔術を全て無効化する力を持っている。 だから魔術の力を宿す僕の瞳と身体の紋様は無効化させる。 そしてこの屋敷を覆っている結界も全て消えさる。
「夢毒が僕を所有している限り、カイヤは夢毒には勝てない」
それは残酷な現実を突きつけられたように、僕の心を突き刺す。
「大丈夫だよ、白圭は強いから」
僕は何も言えない。
「だから、行ってきます」
ここが、幻ならよかったのに
此処が夢なら良かったのに そうすれば、現実に戻ったとき夢華は消えていないのに
夢華が再び眼帯をつけると、屋敷の結界が再び展開される。 それと同時に僕の瞳も深紅に戻る。 夢華は、僕を振り返ることなく後姿を見せ歩いていく。 僕は、行ってらっしゃいとは言えなかった。
「あれが、夢華の無効の力か」 「そうだよ」 「白眼になると、より一層カイヤと夢華は似ているな」 「そりゃぁ、家族より大切な大切な従兄弟ですから」
まぁ、僕が家族を大切だ、なんて思ったのは7歳までだけどね。 それ以降は憎悪の対象でしかなかったわけだけど。
「……罪人の牢獄と言えば、泉と郁がいるな」 「……そうだね」
全く、泉も僕と同じだよね、大切な人のためならどんなことだってしちゃうのだから。 そう、泉も郁の為に罪人の牢獄に行ったのだから。
「夢華と泉が当たればどちらが勝つ?」 「……そんなこと言わなくてもわかるでしょ」 「泉は夢華のことを知っているだろうから、郁を傷つけない限りは殺そうとはしないだろうが、郁を傷つけた場合はその限りじゃないぞ」 「わかっているよーもう、やっぱり僕も罪人の牢獄に殴り込みにいこうかなぁ」
そうすれば、危険人物を密に排除することだって可能なのに、なのに
「それをお前がしないのは、それこそが、そうすることが夢毒の掌の上で踊ることになるからだろ? お前から全てを奪うための」 「そんなことはさせないよ。あの男によって壊されてたまるものか」 「お前のその雅契の名が、その権力が夢華を守る糸だからな」
特に話していないのに、鳶祗はどうして、僕のことに突っかかってくるのだろうか。
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