零の旋律 | ナノ

Prologue


 ――生きていようが生きてなかろうが、誰も困りはしないだろ?

 全てを見透かす様な瞳は、一見すると優しげに映るがその中に眠るのは無慈悲で残酷な色。
 誰が生きてようが死のうが構わない。目の前で死にゆく人がいても、何も感じない。
 誰が泣いても笑っても、彼には何も関係がなかった。
 唯、目的が達成するために誰が犠牲になろうと、誰が壊れようとも、そんなものは盤上の駒が敵に取られ、駒が減ったこと程度にしか関係ない程に、現実としては見なかった。

「自分から手を上げといて殺すな? なんとまぁ調子のいいことが云えるんだな」

 青年は笑う。下らないと、生きるか死ぬかのこの場所で命乞いとは愚かしい。
 命乞いをするのならば、最初から盾突くな。

「大切な人に手を出そうとするなら、お前らを生かしておく必要はないんでな」

 青年は手を上げる、迸る紫電。一瞬の出来事。
 大切な人を守りたいだけの刃。その為なら青年は何だってした。



- 138 -


[*前] | [次#]

TOP


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -