W 「初めて出会った日から、変わらないのだよ。僕の感想は」 生まれて初めて今まで出会った金色より輝いていた。宝石より眩いそれに目を奪われた。だからこそ声をかけた。 このまま死んでいってほしくなくて、自分の思いで、彼を呼び起こした。 それでも、どうしてそんなことをしたの? と誰かに問われれば笑って答える『大嫌い』だと。好きになれることはないと。 じゃなければ何度も一歩間違えれば死ぬような喧嘩をすることはない。 街を破壊することもない。出会いがしらに殴り会うこともない。 憎しみはなくとも、嫌いだったから。 「ちぃしぶとい奴めっ」 狙撃する――それは水渚の肩に命中した。栞に使った同じ銃弾、時期に動けなくなる。だが、それは見当違いだった。 「僕は、僕はね」 肩に埋まった銃弾を泡を使い抜き取る。毒が完全に肉体に回りきる前に、自分を傷つけ血を流すことで回避する。 視界がかすむ、血を流しすぎた。それでも意識だけは鮮明だ。 「あはははっ、僕は簡単にはくたばらないってことだよ」 笑う、狂ったように笑う。 初めて挂乎から余裕の笑みが消えた。いくら優勢だろうと、いくら相手が劣勢だろうと、いくら攻撃を加えようと倒れる素振りは見せない。強固な意思をかえることは出来ない。 「なんで君なんかに僕の意思を変えられなきゃいけないのさ」 不敵に笑う水渚に、初めて挂乎は悪寒する。 夢物語じゃないのかと、思ってしまうほど。支配者になどなれないのではと絶望しそうになるほど。しかし寸前のところで思いとどまる。 どう見たって有利なのは自分なのだ。もう少し攻撃を続けていれば死ぬ。 「もしも、僕が此処でくたばったとしてもね、それは君を殺してからの話だ」 沫が無数に襲いかかる、肥大した沫の威力は普段使っている沫の威力とけた違い、一つでもまともに食らえばそれだけで致命傷となりえるだけの威力を誇っている。 「はははは、けれど最後に笑うのは私だ!」 挂乎の後ろに控えていた部下――何人かは水渚の攻撃にやられた。しかし全滅したわけではない。 部下と共に一斉に狙いを水渚に向ける。 水渚に避けるだけの力は残っていない、ただ、力強い意思がそこにはあるだけ。 銃弾は水渚に着弾する。容赦なく、遠慮なく、無慈悲に。 肩、足、頬、腕、どれも致命傷にはいたらないが、それでも死んでもおかしくないだけの銃弾だ。 一斉に射撃したが連射したわけではないのがせめてもの救いか、否、連射したくとも出来なかったのだ。 部下たちは、全て絶命していた。一瞬の隙に。何が起きたか理解するまでもなく。 「栞ちゃん……」 後ろを振り向かずともわかる、誰が自分を助けてくれたのか。遠距離から、何も理解させないままに相手をおいやれるのは栞しかいない。 「毒がまわっているのが、血からなら……ある程度血さえ失ってしまえば少しは動くんじゃないかな……って思って試してみたんだけど、上手くいって良かったよ」 血の失せた、青白い顔して、それでも水渚に笑みを向ける。水渚は振り返らずともそれが手に取るようにわかった。 「有難う栞ちゃん」 神経が麻痺しているのか、もはや痛みを感じない。 もう長くないのかもしれない――それでも、友達を巻き込んだ挂乎だけは許せない。 [*前] | [次#] TOP |