U 「何が……」 すぐに事態を理解出来ることとなる。 栞を撃った方向から、十五前後に及ぶ罪人、反対側から五名の罪人が武装してやってきた。 その中には先ほど栞に事態を告げた人物も混じっている。それだけではない、千朱と今朝出会った罪人もまたいた。 「君たちは?」 「此処までくれば充分といっても過言じゃないなぁ、予定も此処まで予定通りに行くと気持ちがいいものだ」 栞に事態を告げた罪人こそが、今回の首謀者、挂乎(けお)。 「君の、栞の力が厄介だったからね」 全ては挂乎の掌の上だった。事態を真相を告げれば栞は真っ先に、自分たちを殺すことも忘れて水渚と千朱の元へ走るだろうことも、そして二人の実力を知っているからこそ二人に神経を集中させることも、 そしてそこを狙撃するだけ。一撃で仕留められない可能性も考慮して動けないように毒入りの銃弾を使った。それは功を奏す。 水渚も千朱も、戦意があるのが意外な程に、怪我を負っている。互角だからこそ決着がつかずに長引いた結果だ。 挂乎にとって朔夜は最初から視野に入れていない。遠距離からの攻撃には目を見張るものがあった、それでも水渚たちほどではない。第一朔夜は致命的に接近戦が弱い。接近戦に持ち込めば恐れる必要などなかった。何より、利用する価値がある。 全ては水渚を失脚させ、自分たちがこの街を支配するために。 策を転がし続けた。その結果がこれ。 「どういうことだ!?」 千朱は声を荒げる。見覚えのある罪人がいるからだ、嫌な方にしか予感がいかない。 心が締め付けられるように――痛む。 「そのままの意味さ。互角である君たちが本気で殺し合ってくれれば後始末は楽だ、此方は大した労力を使わずに済むのだからな、そのまま水渚を殺せばいいじゃないか、『大嫌い』なんだろ?」 感情に任せて動くことが出来なかった。『大嫌い』の言葉で動けなくなる。 ――確かに、俺は繰り返した。繰り返し続けた。それはあいつのことが殺してやりたい程憎いから……。 「金の瞳など、気持ち悪くて仕方がないよ」 「黙れ!」 叫んだのは千朱ではなかった。水渚だ。力強く、大地を木霊するように。 「お前が何を知っている。お前が何をほざく、ふざけるな」 水渚は埃をはらうように、手を横に振る。鋭く。 「僕を失脚させたいと思うのも上等、僕を殺したいと思うのも上等、下剋上だって何時だって受け取ってやる、けれどそれに私の友達を巻き込むことは許さない」 一歩一歩進む。 「僕を殺したいのだろう? 僕の代わりに支配者になりたいのだろう? ならば私が相手をしてやるから、かかってこい」 沫が一気に膨れ上がる。無数の沫は、分裂ではなく結合しようとしていた。 無数の固まりは集まり、そして肥大していく。 [*前] | [次#] TOP |