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屋敷、薔薇園
「何、カイヤは夢華ちゃんに髪飾りを上げたのか」 「そうだけど、さっさと消えてくれるエンちゃん。僕のことはエンちゃんに関係ないでしょ?」 「でも、お前は落ち込んでいるぞ」 「るっさいなぁ、鳶祗! 僕と君は相容れない敵同士。何世代も前から対立してきた一族同士。君がどんなにムカついて殺されても仕方ないくらいの甘ちゃんでも、それだけは変わらない事実だし、僕は君が嫌いなんだ、目障りだから消えてよ」
あぁ、なんか芸ないなぁ消えてしかエンちゃんに向かっていっていないよ。 普段ならもうちょい違うことも言えたのだろうに
「消えろって言われてはいそーですか、って返事していたらとっくの昔に俺はお前の前から消えているよ、俺がここにいるのは簡単だろ? お前が情緒不安定な時は必ず周りに死人が現れるからな、無益な殺生は好まない」 「……」
死人が現れるのは僕のせいだけどさぁ、それを態々なんでエンちゃんが止めようとするわけさ、本当に甘ちゃんだよね。 だから僕と相成れないってことがわからないのかなぁ、エンちゃんって馬鹿じゃないのに、馬鹿だよね。本当に。
「全く、本当に馬鹿」
その時、視界が白くなった気がした。
「……夢華」 「夢華ちゃん」
相変わらず、突然現れるなぁ……いくら僕が遠距離タイプの術師だったといっても気配には敏感なほうなんだけどなぁ。じゃなかったら死んでいるし。 って横を見てみると、僕の隣に座っていたエンちゃんも驚いた表情をしている。 まぁ、夢華に殺意はないけどさぁ、君はそんなんでいいのかなぁとか密かに思わないでもない。 エンちゃんは武術の名門鳶祗一族なのに。
夢華の姿を再び見ると、やっぱり、罪人の牢獄になんて行かせたくないね。 個人的にはあそこにいるよりか白き断罪にいるのは許容出来るけど、あんな無法地帯にはね。 あの牢獄は馬鹿みたいに規格外が山ほどいるんだし。
「白圭が、実行するってだから僕行ってくるね」 「やっぱ、行くの止めて」 「駄目だよ、行かなければ全ては夢毒の命令。カイヤに迷惑がかかるしね、それに僕がそこで死ねば、カイヤの障害はなくなるのだよ?」
そう言って、夢華は眼帯を外す。
屋敷に張ってある無数の結界が悉く消えさる。 長期間、それを使われると困るけれど、短時間くらいならいいか。 僕の深紅の瞳も同様に白に代わる。
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