零の旋律 | ナノ

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「でも、君は別、別。君を殺すと多分後々面倒だしね。それを考えると、二人とも生きていることが最終的に一番簡単じゃん」
「……」

 納得しない表情の水波に、カイヤは頬を膨らませる。

「そんなこと、僕がいうまででもないでしょ? 天才軍師なら、どの方法が一番確実で一番利益になるかなんてわかっているんでしょうし」

 水波はわかっていても何も言えない。どの方法が一番確実かなんて最初からわかっている。それでも感情は、このまま引き下がりたくないと告げていた。

「最初は水波の勝ち。でも最後は律の勝ちだね。まぁ僕が番狂わせさせたけど――それもまた一つの物語でしょ」
「……わかったよ。でも雅契カイヤ、それに志澄律、僕は何時か君たちが逃れられない方法を用意して、君たちを捕まえるから」

 水波は弓を背中にかけ、そのまま志澄家を後にする。その後ろ姿を攻撃することはなかった。

「今回は危なかったねぇ律律」

 朗らかに笑うカイヤには最初から何も関係なかったかのように振舞う。

「泉に頼まれてきたんだろ」
「まぁね、今回のは誰が来ても良かったんだろうけど、僕は移動能力に関しては一番だからねぇ」
「移動術式が使えるのはお前だけだからな」
「そうそう。律にとって大切なのが泉でもね、泉にとっても大切なのは律なんだから」

 ふと、カイヤに聞いてみたい言葉が律の中で生まれた。

「なら、お前にとって俺は何だ?」
「共犯者でしょ」

 あっさりと告げる言葉に律は人知れず笑った。


「あぁ、そうだ、ヒヤシンスってなんだ?」

 思い出したようにカイヤに問う。

「花じゃないの?」
「まっ、それでいいか」


+++


 水波は岐路につく道中、今回のことを考える。今回の考え全てが甘かったと認識を改める。
 律を捕まえるには、律だけでは駄目だと。

「あぁ、そうそう律君、ヒヤシンスはねぇ――」

 ――次こそは君を捕まえてあげるから。逃げ場がないように周囲を固めて。その為にはまず、もう少し戦闘面に強くならないと駄目だね。



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後書き

本当はもう少し長く続く予定だったのですが、あまり長くてもな、と思い省略。
花言葉からヒヤシンスはとってきたのですが、他にこれだ!というのがあったら変更する予定。
律と水波の話は書いていて個人的に楽しい。



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