零の旋律 | ナノ

V


「一つ一つのピースを組み合わせて、それを結果につなげないとね」
「ってか今回はなんで軍師水波が自ら赴いているんだ?」

 当然の疑問を悧智はぶつけてくる。

「そもそも軍師水波は、元々此方が勝つために作戦を練るのが本業だろう? 何故、こんな起きたことを解決する仕事に、しかも非公式でやっているんだ? 軍師となれば他にもやらなければならない仕事はたんまりあるだろうに。あろうことか、今回は俺たちみたいな戦闘部隊を引き連れて」
「……鋭いなぁ」
「別にこの程度のことは誰だって気がつくだろう。それこそ隊長は最初から気がついていたしな」
「……他の部隊に頼むべきだった?」
「無理だろ」

 悧智の遠慮ないものいいに、水波は苦笑する。本当にある意味真っすぐで素直すぎる。
 もっとも自分より年上に対して、口にしていえば悧智は顔を顰めたことだろうが。


「まぁそうだろうねぇ。情報管轄の春蘭だと戦闘に特化した人は少ないし、何より機密情報が多いだろうから、僕が連れ出すのは難しそうだし。桜花は謎が多すぎるから、今回みたいな私用の出来ごとには着手してほしくないってのが本音だし。白蓮はいい部隊だけど白圭は正義感が強すぎるからね。この場で犯罪者への憎しみで暴走されちゃ困る。ってなると、残ったのは陽炎の君たちしかいないわけだ」
「消去法で選ばれても嬉しくないな」
「そういわないでよ。僕だって結構使える駒には限りがあるんだから、どうしたって厳選するしかないんだよ」
「おう、さりげなく駒とかいってるんじゃねぇよ」
「若いね」
「お前より年上だボケ」

 口の悪い悧智との会話は水波にとってはある種新鮮だった。軍師の地位まで上り詰めてしまうと、此方がいくら砕けた言葉で喋ったとしても、相手は敬語や丁寧語で話しかけてくるし、常に何処か張りつめた空気が漂っていた、自分の部下でさえ、此処まで砕けて面と向かって言ってくる相手はいなかった。そうなることに一抹の寂しさを水波は感じていた。対等に接してくれる相手がいないからだ。

「口の悪いおにーさんだこと」
「うるせぇ、で目的はなんだ? 犯人像の目星は付いているんだろ?」
「うん。ついてはいるにはいるけど、それは教えられない」
「……先入観から物事を判断しないために、あえて事前情報は俺たちには言わないってことか」
「正解」

 本当に悧智と隊長の会話は言葉数が少なくて済むと水波は思わずにはいられなかった。
 少ない言葉で、二人は自分の言いたいことを的確に理解してくれる。
 貴重な人材でもあった。下手したら、自分の部隊に引き抜きたいと考える程に。それを実行出来ることはないだろうが。白き断罪にとっても二人は重要な人物だから。


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