零の旋律 | ナノ

Collection of weirdo


 そうなれば、奈月と一緒にいることは叶わない。前に一歩だけ踏み出したのを後ろへ全速力で疾走する羽目になることは避けたかった。
手持ちの武器は持ち合わせていない。お裁縫セットに見つかって身体を調べられたら困ると判断し、地下に捨ててきた。
 縄の縛り方は流石、というべきか簡単に縄抜けが出来ないように縛られている。幸いなのは両腕を後ろではなく前で縛られたことか、と李真は冷静に状況を分析する。
 尤も恒衛だけはそれよりもさらに厳重に縛られている。

「さて、全員見つかったことだし、死んでもらうか」

 お裁縫セットの上司――架秦が残酷な死刑宣告をする。にっこりとほほ笑んだままの笑顔で告げられる言葉は真実みを何より含んでいて不気味だった。
 子供が泣き出す。恐怖で。

「あーもう、五月蠅いよっ」

 泣きだした子供の前に、架秦と変わらぬ笑顔でしゃがんだのは依有だ。
 李真は直感でやばいと判断し、縄で縛られて不自由な身体で動く。糸が使えないからといって――死ぬわけにもいかないしこのまま小さな平穏を崩されるのも隠れきれなかった以上避けたかった。
 依有の袖口から出た針が子供の眼球に突き刺さろうとした時、子供の位置がずれる。弾き飛ばされたのだ。
 受け身も取れない子供はただ地面を転がる。突き刺さるはずだった針は別の場所を裂いた。
 李真の手と手をつなぎ合わせて拘束している縄だ。全部を切るには至らなくとも切り目や薄くなった縄だ。李真の腕力で残りは全部外した。縄が周囲を舞う。呆然とする依有へ縄で括られた両足を蹴りだす。突然の出来事に対処が遅れた依有は腹部に蹴りを受けて後退する。
 状況に適応されるより早く、李真は依有を蹴ると同時に奪っていた針で足の縄を解く。体制を整え立つ。

「ちょっ! 痛いなぁ! いきなり何をするのさ!!」

 依有の言葉に未継が反応をして鋏を構える。

「依有、そいつ殺すなら目は俺にくれよ!」

 目を爛々と輝かせながら未継が場違いなことを口走る。

「は?」

 思わず李真が顔を顰める。目をくれ、とは言葉の意味の通りなのだろうが、理解出来ない。

「確かに、この人の目は未継好みだよねー」
「綺麗なグラデーションをした瞳……あぁ、欲しくてたまらない!」

 ――類とも組織が変人集団の集まりだって噂は本当かよっ
 李真は内心で舌打ちをした。

「君の瞳綺麗だから欲しいってっさ!」

 依有の針が李真に向かって投擲される。李真は奪った針で弾き飛ばした。

「ひゅぅ!」

 依有が口笛を吹く。手の平でくるくると依有は針を回転させる。


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