零の旋律 | ナノ

No leisure


 世界レリュカ・ミューレにおける三大国アルシェンド、レミュレス、ホーク・ルア・フェイス、さらに三大国を相手に商売をすることで発展を続けているカルテニア。世界レリュカ・ミューレにおける人口はこの四カ国に集中していた。
 けれど、その四カ国何処にも属さない列島が無数に存在し――小国がいくつも形成されている。
 四カ国とは繋がりが希薄な小国アルミヤ。正式名称『有宮』、通称『宮の国』と呼ばれるそこは、独自の文化における字体を未だ使用している東の島国だった。
 その一角に、正式名称ザイン、通称『類とも』組織の拠点がひっそりと存在している。

「あぁ……美しいなぁ」

 余暇を満喫していた未継は、恍惚とする。その視線の先には、透明なガラスケースと未継が独自に開発した液体が入れられており、液体の中央部分に浮遊しているのは――目玉だった。レプリカや動物の目玉ではない。液体の効果により刳り抜いた時の鮮度が保たれている人間の目玉だった。ガーネット色に輝く瞳は先日大国レミュレスに赴いた時一目ぼれした瞳だ。手に入れる際少々怪我を負ってしまったが、怪我に見合うだけの――否、それ以上の価値がその瞳にはあった。
 だからこうして、鑑賞を楽しんでいるのだった。

「ほっんと未継は瞳好きだよね―」

 瞳を鑑賞して愉悦に浸っている未継の隣では、依有が姿身の前で一人ファッションショーをやっていた。

「あったり前だ。まぁ一番のお気に入りは是、何だけどな」

 そういって未継が取り出したガラスケースの中にある瞳はカーマインからレモンイエローに徐々に変化している、という独特なものだった。

「あぁそれ。貴族のご婦人から奪った瞳だったねー」
「そうそ。是がやっぱ俺の中では一番だなぁ。ほんと、この瞳は極上だよ。で、依有はなんだ、またデートか?」
「そうだよー。今日はねーどんな服装を着ようか悩んでいるんだよ。深層の令嬢って感じで、紫のドレスが似合う人なんだ。だから、それに合わせてコーディネートしようと思って」

 くるくると依有は楽しそうに一回転する。

「そうですか……全く、貴方も物好きですよねぇ」

 ベッドの上で座りながら、兎のぬいぐるみを作成していた裏咲が苦笑する。

「僕としては裏咲も物好きだと思うけどね」

 暇さえあれば裏咲はぬいぐるみを量産するのであった。可愛いものが好き、というわけでは別段ないのに気がつくと可愛らしい物が出来あがっている。

「そうですか? 貴方のデートと比べれば普通ですよ」
「そうかなー? 僕は好きになれるかもしれない人とデートしているだけだから普通だと思うんだけどなー」

 依有が不思議そうに首を傾げた所で、部屋の扉が開けられた。

「余暇は今日なしだ。仕事だ」

 ネイビーブルーの癖がある髪をした人物が、目玉とぬいぐるみと服で溢れている不気味な部屋へ平然と足を踏み入れて告げた。

「ちょ! 僕デートの予定だったんだよ! ちょっと海の底に沈んでくれば!?」

 デートの予定を仕事で妨害された依有は酷く憤慨し、他の奴らに任せればいいと抗議をしたが、急を要するという言葉で依有のいい分は受け入れられなかった。


- 2 -


[*前] | [次#]

TOP


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -