零の旋律 | ナノ

A king's commandZ


『異能はね――この“世界の産物”ではない、それが答えだ』
「なっ――!」
「この世界の産物ではないってそれは一体!」
『この世界ではない惑星における『異能』が、この世界の異能者に干渉した。それゆえに、お前たちが出会ったであろう実験体は操られ、フォルトゥーナは倒れた。とはいってもフォルトゥーナも最初は操られていたのだが、それに関しては私がさらに『干渉』することによって抑えた』
「この世界以外に、世界があるというのですか」

 にわかには信じられないが、レガリアがそういうのであれば、棟月は信じるだけだ。
 ただ、それでも驚愕だけは隠せなかった。だから問わずにはいられなかった。それだけの衝撃があった。

『あるよ。私たちの世界には存在しない、存在してもこの時代において作ることの出来ないオーパーツという『異能』をもたらしたものがね。目的は恐らく、この世界を侵略……いや、この世界の人間を隷属と化すことだろう。『異能』を有した人間をさらに強力な上位の『異能』で干渉することで、思うがままに操ることが出来る。それゆえに、この世界に異能をもたらした。利益を得るための投資として力を授けたのだよ』
「あんたは何故……というか平気なのかよ」

 会話をしている限り絶対の王レガリアが操られている雰囲気は微塵もないが、最初の時僅かに間があったのをウィクトルは覚えている。棟月も気にしていた。
 通常であればレガリアに間があるとは考えられない。

『私は私の『言霊』において、干渉を遮断している状態だからね、普段通りとはいかなくてもせいぜい微熱程度の体調で動くことは可能だ。けれど、状況によっては私も危ない。だから、このことが起きたが故に、私はお前たちに話しているのだよ』
「レガリア様! そんな」

 棟月の絶望した表情をウィクトルは見たが、何も言わない。

『棟月、気にしなくていいよ。元々、私は異世界の侵略者が来るだろうことは予想していた』
「気にしますよ、レガリア様。俺にとって貴方は全てなのですから」
『有難う』
「で、どういうことだ? 予想していたって」

 棟月に会話を続けさせれば、レガリアの異世界の侵入者が来ることを予想していた過程を知ることは叶わないと判断したウィクトルが会話に無理矢理割り込む。

『簡単なことだ、原初の異能はそもそも――オーパーツと便宜上名づけようか――オーパーツがもたらされた時、最初にそれを振れた三人の人間のことをさす。私と、私の友人二人だ。そして、私たちはオーパーツが危険だと判断して『言霊』によってそれを破壊した。異能がこの世界に広まれば、争いが起こることは目に見えていたからね。不要な力は怱々に消滅してもらった。とはいっても私たちだけは異能を持ち続けたけれどね』
「一度得た力を手放せなかったのか?」
『それに関しては否定をしないでおくが、結論からいえば異能を知らなければ異能に対する対抗手段がないだろう? 私の『言霊』と同レベルの、もしくはそれをしのぐ異能者が襲って来たとして私たちの世界に対抗出来る戦力はあったのか?』
「――まさか異端審問官とは」

 棟月が一つの真実に気付く。

『そうだ。異端審問官が武装集団であるのは、異世界からの侵略者が来たときに対抗するための組織として、私が結成したのだ。時間にして百年前後で、異世界から侵略者が来る、というのは私たちが導き出した結論だ。百年は過ぎたが、それでも誤差の範囲ないでありそろそろ来るだろうと私は予想していた。百年の歳月があれば異能は親から子供に受け継がれ、そしてさらに子供が子供に“受け継ぐ”そうして異能が定着し――全ての人間が異能を有しただろう、期間を彼らは待っていたのだ』

 話が途方もなくてウィクトルは是が夢なのではないかと思いたかった。
 仮に是がレガリアから発せられる言葉でなければ荒唐無稽な話と一蹴したことだろう。絶対の王レガリアの言葉だから真実だと受け入れられるのだ。

『研究の塔における実験も、私の友人が異世界からの侵略者がきた際に、『干渉』で支配されないための異能――つまり、この世界オリジナルの異能を生み出すことを目的にしていた施設だったのさ。結果としては失敗だったけれどね。それに途中から目的が変わってしまった』

 実験体は、結局オリジナルの異能に成り変わることは出来ず、異能の干渉を受けてしまった。


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