第二話:纏わりつく雰囲気 最果ての街についた時、炬奈と朧埼は思わず息をのむ。他の街とは違う、常軌を逸した雰囲気を街全体から醸し出すこの場所に。辺りは血、死臭が漂う。建物は今にも崩壊しそうな程危険なものも平然と立ち並ぶ。 「……」 無言になる二人に榴華は何とも言えない気持ちに包まれる。 此処は他の罪人の街とは何もかもが桁外れに違う場所だから。 だからこそ、二年前ある事件が起きた時此処だけは普段と何一つ変わらなかった。 最も、最初の街と呼ばれる第一、第二、第三の街を経由しないとたどり着けない場所にあるというのも理由の一つだろうが。そんなものただの後付けの理由でしかない。最果ての街が異様で異常で異色で奇異な場所だから最後に回していた。それだけのこと。最初に当たるような場所ではない。 もしも、一般の人が罪人の牢獄の存在を知り、その姿を想像するなら――最果ての街のような場所を想像するだろう。 「雰囲気からして、私たちの復讐相手はこの街にいると思えそうだな」 顔をひきつらせながら炬奈はやっとのことで言葉を口にする。 「でも、この街は油断大敵やで」 「見るからにそんな雰囲気漂っているだろう」 「まぁ、そうやけどなぁ。ここの罪人は他の罪人よりもあくどいし、残酷やし。悪逆非道集団やで。大逆非道なことも沢山するからなぁ」 「罪人の牢獄の名にふさわしい街ということだな」 炬奈は術を使い槍を取り出す。最初から所持していた方がいいと判断してだ。 武器を所持していれば相手に警戒心を与える。不要な争いの種はまかないために目立つ武器を所持しなかったが、此処から先は違う。武器を持っているか持っていないか、そんなことを相手にされないし、関係ない。 「朧埼は絶対私の隣から離れるなよ」 「わ、わかったよ。姉さん」 そんな二人の様子を傍目に朔夜は手に顎を当ててしばし思考した後ある結論に至った。 「梓探すか」 「梓……だと!?」 「なんだ、知り合いか?」 ただならぬ驚愕さを見せる炬奈に朔夜は眉をひそめる。 「知り合いというか、いきなり襲われたぞ」 「……じゃあやめとくか」 「あのような狂気の女とは私は会いたくないし、関わりを持ちたくはない」 「きっぱりと否定したな。梓はこの街の支配者だよ」 「成程」 手を叩いて納得する炬奈。 「そこまで納得する要素高かったか」 「あぁ。ねじがぶっ飛んでいるような女だったからな。まったくもって……出来ることなら出会いたくはない」 「らしいぜ、榴華」 「自分が道案内するんかいな」 榴華のため息一つ。乗り気にはなれない榴華であった。最近は柚霧との時間も減っているかという理由もあるのだろう。 [*前] | [次#] TOP |