零の旋律 | ナノ

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 その風景に炬奈と朧埼は顔を引き攣る。
 あからさまな態度に榴華は面白そうに笑った。此処まであからさまな態度をされるとは思ってもみなかったからだ。

「見つかるといいんねー、自分らの目的」
「あぁ、そうだな」
「ここ見つからんと、次の最果ての街にはいきたくないんよ自分」

 榴華の飄々とした真意を読み取らせない態度でも、最果ての街への怪訝さを伺わせていた。
 榴華自身、必要がない限りは最果ての街へは近づかない。そういう街だから。
 その時、一人の人物が榴華たちに近づいてきた。

「あらら、紅於はんどうしたん?」

 赤い衣を見に纏い。赤い髪は肩で切りそろえられている。おかっぱだ。
 目の下には一見すると隈にも見える黒いメイクを施してある。手には扇子を握っている。年の頃合い十代中ごろ。しかし年相応には見えない大人びた雰囲気を醸し出している。

「それは此方の台詞ですよ。榴華さん。何故第一の街の支配者がこの街に? それに朔夜さんも。そちらのお二方は?」

 紅於と呼ばれた少年は炬奈と朧埼に視線を移す。

「あぁ、紅於はん二人は炬奈と朧埼ってゆーて、今自分がお手伝いしているんよ」
「榴華さんがお手伝いをするほどのことですか?」

 紅於の目が細められる。

「なんてゆーたらいいかなぁ、色々あったんよ。それで結果的になぁ」
「そうですか、まぁ細かい事情にまで私は口を挟みませんので。第三の街にご用があってですか?」

 紅於は本題に入る。彼らを見つけたのは紅於にしてみれば偶々でしかないが、それでも何か目的があるのか勘ぐる。そうでなければ研究者以外は殆ど寄りつかないこの場所に足を運ぶ必要性はないと思っているから。第三の街支配者として、不審な事が起きないように確認の意味を含めている。

「んーまぁちょっくらねん。紅於はんには迷惑かけんよ」
「それはお願いしますね。私には是から色々とやることがあるので」
「んじゃ、さいなら〜」

 陽気な声で榴華は紅於に手を振る。
 紅於は手を振って返す――ことはしなかった。

「相変わらず淡泊やなぁ、紅於はんは」
「お前と違うからだよ」

 朔夜の突っ込み一つ。榴華はやっぱり? と朗らかに笑う。その様子を傍目に、炬奈と朧埼は罪人の牢獄と、国の中何が違うのかを考えていた。
 第三の街を散策してもその日も特に何も発見されなかった。肩を落として帰宅。次の日は出来ることなら関わらずに済みたい場所。最果ての街へ赴くことになった。
 榴華が予定時間より十分程遅刻する。

「何遅刻してんだよ。俺が時間どおりに起きて朝早くから活動しているのによ」

 朝のこの時間帯は普段の朔夜にとっては睡眠時間。不機嫌な表情を隠そうともしない。髪の毛は篝火と数日会っていないからか、所々毛先が絡まっている。

「すまんすまーん、ちょっと来客があって予定外のことしていたんよ、勘弁」

 両手を会わせる。同じ場所に寝泊まりしている。しかし来客があったとは誰も気がつかなかった――それほどのてだれか。用心していたか、それとも来客などなかったか。

「まぁいい。案内を頼んだ」

 炬奈は特に気にも留めず、歩き出す。最果ての街へ向かって


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