零の旋律 | ナノ

第一話:探索


 四人は最果ての街へいく道を進んでいく。
 先導するのは遊月だった。その隣を遊月の敵がいないか確認しながら唯乃がいく。
 後方には栞と篝火。篝火はやや緊張の面持ちだったが、栞は最初出会った時から変わらず飄々としている。
 梓に運よくすぐに出会えれば篝火としては良かった。そうすれば最果ての街の罪人は手を出してこない。けれど梓と出会わなければ話は別だ。獲物を見つけた勢いで襲ってくるだろう。あそこの街の罪人は他の街の罪人より悪人で、実力も高い。だからこそ、態々訪れるような場所ではない。

「久々だなぁ……最果ての街とか」

 栞が呟く。それは独り言なのだろうが、篝火が反応をする。

「俺は最果ての街に一人でいったことないから、どんな奴らがやってくるのか皆目見当もつかないよ」
「ひょっとして梓と一緒だったとか?」
「あぁ。梓とかと一緒だったからな」
「梓は女王様だよね。最果ての街では」

 梓に逆らう罪人は最果ての街には存在しない。あそこでは梓は絶対権力者であって、梓の命令は絶対服従。

「一体どんな人物なんだよ」

 前を歩きながら聞いていた遊月は思わず零してしまう。例え最果ての街の支配者だろうと、本来ならあそこの地に集まる罪人は支配者を支持しない。恐怖による支配。それによる統率。力がなければ、隙を見せれば弱みを弱点が判明したらその時点で罪人は我こそと襲いかかる――そんな場所だった。
 だからこそ興味が沸かない――わけはない。


 最果ての街に到着をする。そこは何処の街より悲惨で凄惨で、建物の大半は廃墟と化しているようなものばかり。コンクリートは赤く染まっている。それは何年も積み重なりこびりついた血の痕跡。建物も所々赤く染まっている。濁り黒ずんでいる赤もあれば、まだ真新しい血も見える。
 人々は一様に危険な雰囲気を漂わせている。
 そこを見知らぬ罪人が歩けば人の目を集めるのもまた然り。

「最果ての街なら――」

 栞がそう喋ろうとしたときだった。彼らを獲物と決めつけた罪人の二人がやってくる。
 その姿は何処か似ている。恐らくは兄弟。二十代後半に見える。赤毛は短く切り揃えている。血走った黒曜石の瞳が、ニヤリと笑っている口元が、歪んでいるのがわかる。
 兄弟の弟の方に見える人物は直系十五p程度のチャクラムを所持している。
 兄の方はフランベルジュを。中距離と接近戦でお互いを補い合う戦法なのか。
 唯乃は前に一歩進みでる。主の判断を仰ぐまでもない。友好的な雰囲気も一切ない。相手にあるのは――明確な殺意と歪み。
 主に害をなす存在を唯乃は排除しようとする――

「おいおい、おじょーさんが相手してくれるのか?」

 ゆらり、ゆらり、ゆらりと揺れる。

「全く、この街に入って早々襲われるとは思いませんでしたよ。無骨な輩ですね」

 後半は挑発としか取れない言葉を。唯乃は別段表情を変えない。この程度の輩と、内心見下しているからだ。


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