T 夕刻、本来なら夕焼けが辺りを覆い、白い建物は夕焼け色に染まる。 人々は夕食に合わせて、人々は自宅へと足を運ぶ街は賑わいを見せ、僅かに閑散とする。そんな時間帯。けれど罪人の牢獄では夕焼け等お目にかかることは出来ない。 「主、そろそろ夜ではないですか?」 「いや、まだまだ人の活動時間だ。むしろこれから活動する人がいる程にな」 梓達と炬奈と朧埼が戦闘していた場所を彼彼女らが戦闘を開始する数時間前に遊月と唯乃は通り過ぎていた。目的はある。砂に時たま視界を妨害されながらも歩んでいく。 唯乃の感覚では今日はそろそろ終わりを迎え明日に備え、寝る支度をはじめる頃合いだった。 「違うのですか」 「まだ、夕方になった程度だよ。あちらで言うならな」 「……よくおわかりで」 人形である自分のほうが時間間隔には優れいてると思っていた、唯乃は遊月の断言する言葉に多少驚きを隠せなかった。 正し、表面上には出さずに内にだけとどめておく 僅かに、間があったのは別に皮肉を言ったからではない。単純に驚いていたから。 「わかるよ、昔はここで暮らしていたのだから」 「……主……」 「ここでは、数日過ごすと感覚が狂いだす。地場も安定していない、あちらの時計系は一切使えないしな。感覚が狂いだすと、結構危険信号だな。なれればどうってことないが、なれないうちはシンドイぜ。まぁ、街につけば別だけどな」 「……少し、信じられないですね」 「街があるということか?」 「えぇ、罪人の牢獄、牢獄なのに街があるというのは一種の矛盾を含んでいるように感じます。この大地は荒れ狂っています。作物など育たないでしょう。この砂も」 唯乃は手を砂を掴むように手を伸ばす。 砂は、僅かに濁っていて黒味を帯びている。 それは決してこの砂がきれいではないことを示す。 汚染された砂は作物の育つ大地に悪影響を及ぼす。 大地だけではない、この地に住まう罪人に、この地にそびえていた廃墟となった建物にも。 長時間、砂を浴びていればどんな悪影響が出るか、わかったものではなかった。 「私には、この程度なら長時間浴びていようがいまいが……人体に直接影響はありません。髪の毛や衣服に砂がまとわりつ……!?」 途中で何かに引っ掛かりを覚えた唯乃は自身の髪の毛に手を入れる。 普段なら櫛で溶かさずとも、サラリととける髪の毛が砂の影響で途中で引っかかる。 潤いを砂に奪われ髪はパサ付く。 ――それは、何故 風が吹くから ――それは何故。だって、この場所は、この地は、罪人の牢獄。地下の空洞に存在する場所 [*前] | [次#] TOP |