零の旋律 | ナノ

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 泣いて叫んで喚いて狂って

 その甲高い音は耳に心地よく響く


+++

「あぁ、今日もこの街は特に異状なし。新人気配なし。相変わらずのイザコザは日常茶飯事、以上」

 罪人の牢獄には、街が存在した
 罪人は牢獄の街に住まう
 牢獄という、政府の隔離した地下世界の中
 一定の鎖と枷はあっても、普段は自由に生きる
 罪人の牢獄は一つの国として稼働していた

 政府は罪人の牢獄を認める
 政府は罪人の牢獄を影で必要とする
 罪人は政府から裏で援助をされる

 廃墟、崩落、腐敗した世界で生き延びるために

「何か耳より情報はないものか」

 罪人の牢獄の住民は街で生きる
 それぞれに新たなる職業
 または政府の国での職業をそのまま職にする

 罪人の牢獄に、街は存在した。
 一部の犯罪者はそこで生き伸びていた。

「……腐敗臭漂っているし。後始末くらいちゃんとやれよ……」


+++

 荒れ狂う街の中で人は更なる狂気に侵されるのだろうか

「ちっ、朧埼!! 逃げるぞ」

 炬奈は急遽梓に近づこうとしていのを方向転換して、後ろに下がる
 蔓の攻撃を気にしながら、梓に後ろを向いて朧埼のもとに掛ける。
 跳躍をして、走って、朧埼と戦っていた罪人の攻撃をかわして、そのまま朧埼の右手首をとり走った。
 元来た道に戻るわけではなく、方向転換をして逃げる。

「えぇぇ、姉さん! なんで逃げるの」
「あんないかれたやつ、これ以上相手にしてられっか」
「いや、でもでも」
「行くぞ」

 朧埼の意見を炬奈は総無視する。
 一目散に逃げ出した二人に一瞬唖然としながらすぐに罪人は梓の命を思い出し追いかけようとした。
 梓のために、梓が願ったことを叶えたいから
 唯、それだけ
 だが、それを罪人達の前に突如現れた攻撃の意思がない蔓が罪人たちの足を停止させる
 疑問に思い罪人達は恐る恐る梓のほうを振り返る。下手にご機嫌を損なえば、自分たちが殺されるだけだと知っているから。

「いーや、逃げるんなら興味なーい。失せちゃったぁ。きゃははっ」

 梓は、後ろに身体を反回転させる
 そしてそのままそれ以上罪人達に語りかけることなく元来た道を戻る

 まるで罪人達は既に眼中にないように――

「はい」

 罪人達は梓の言葉に従う。例え興味を向いてくれなくても。

「それにぃ、どーせ、この土地からは逃げられないわよぉ。彼彼女がぁ、生き残れる実力と運を携えていたのなら、また会えるわよぉ」

 ならば、その時頂けばいいだけ、血に塗れたその身体を

「あはっ」

 喜々とした声は梓以外には聞こえない


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