零の旋律 | ナノ

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 荒れ狂う街に安定の言葉などは存在しない
 次から次へと放り込まれる罪人は新たなる災いをこの地に巻き込み
 荒れ狂う街
 平穏も平坦の安寧も何も存在しない罪人の牢獄
 罪人の牢獄は
 繰り返す
 繰返す
 滅びと再生を



「梓様に殺されないようにせいぜい頑張りますわ、にしても自分のこの素晴らしい性格に何か問題あるんか」
「……そういう言動をしているからだろう。九割九分」
「うはっい、これは、自分の性格をとてもよくあらわした自己主張やで、それをとっても、沢山個性は残るけどなぁ」

 榴華はおどけて笑う。本性を隠して、偽りの性格を演じる。

「残るのかよ、ならいいだろ」
「つまらんやろか」
「そう言う問題か?」
「そういう問題」

 求め続けた役者たちは一癖も二癖もある人物たちばかり。
 梓にしろ、榴華にしろ、雛罌粟(ひなげし)にしろ、紅於(こうお)にしろ、またしかり。
 銀髪はこれ以上会話を続けていても話がそれるだけなので、本題を榴華に話す。

「了解したでぇ」

 榴華は素直に承諾した。
 承諾の言葉を聞いた銀髪はそのまま『崩落した街』を後にしようとしたが、それを榴華が引きとめる。

「最初に出番あるやつぅってなんか雑魚キャラっぽくていやだわー最後に呼ばれるんが強いんよ。一対一のサシ方式じゃ、雑魚 三番手 二番手 隊長 ボスなんで」
「……どこの方式だ」
「その方式でいくと自分、雑魚中の雑魚やないか、真っ先に廃棄処分されるでー」

 恐ろしいと身震いする榴華に銀髪はため息を漏らす。“そんなはずがないから”

「……榴華」
「あーいぃ。わかっとるて、銀髪の麗しき青年クンは役者を唯の使い捨てのコマにはしないってゆことくらい」
「……いい加減名前で呼んだらどうだ」
「いーややぁっ、名前で呼んだらつまらんでしょに、毎回色々呼んで困らすのが自分の楽しみの一つなん。それを奪ったらいかんよいかんよ。熱でてぶっ倒れてるよ、榴華の名に懸けて」
「いらんとこで名にかけていうな」
「まぁいいや。じゃあ、出かけるんで〜またねぇ」

 榴華は、そのままの恰好で廃墟の奥へ進む。別に今すぐに動く必要はないから、時期を待てばいい。それだけ。

 銀髪元来た道を戻る。此処での目的は終わったから。
 榴華は決して雑魚ではない。突出した戦闘能力を誇る。だからこそ、榴華に頼んだ。


 砕け散った破片はどれだけ集めようとも
 元には戻らない
 歪に砕け散った其の欠片が後に残るだけ
 元には戻らない

 血に染まりきった手は
 二度と白にはならない
 永遠に赤くなるだけだ

 踊れ舞い狂う罪人の牢獄は狂喜の空気を生み出す
 ――後に残るのは砕け散った欠片だけさ


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