第八話:銀の命令 罪人の牢獄は生き残る 政府は罪人の存命を認めた 裏の仕事を一部の者に頼み、その恩恵を与えた それは、罪に染まった世界を現すことになる 銀髪が向かった先は罪人の牢獄中間部に広がる廃墟。腐敗した大地が、さらに大地を汚染しようとしている。此処は嘗て街として存在していた『崩落した街』 廃墟の建物、それも殆ど崩壊していてかろうじて残っている部分も今にも崩落しそうなほど危険な状態であった。 その場所に一人の人物が埃まみれのソファーに座って足を組んでいる。 「おおっ、銀髪ん、ひっさびさやねぇ〜」 銀髪の姿を見かけると、その人物は手を振りながら軽い口調で銀髪に声をかける。 その人物の名は榴華。罪人の牢獄第一の街支配者にして、戦闘能力は随一の高さを誇る。 「最後にあったのはいつでしたかね?」 「さぁ、覚えとらんね。まぁええやないか、こうして会いに来て下さりましたわけですし〜」 「そうですか、ならいいですが」 「所で何、その口調気持ち悪ィィーいやーなんか伝染しそうやないのー今すぐやめんとこの命綱はなすで!」 命綱とは、ある意味文字通り命綱で、この今にも崩落しそうな建物を支えている柱のこと。はなすとは、つまり壊すことでこの建物を崩壊させるということ。 「……どいつもこいつもそんなに丁寧な口調が気持ち悪いのか?」 はぁ、とため息をつきながら銀髪は口調を元に戻す。 「気持ち悪い気持ち悪いんよ。腐った食べ物とかより拍車をかけたのよりさらに気持ち悪いんよ。気分最悪。明日の朝は目覚め最低」 「おい、流石に酷くいいすぎだ、榴華(りゅうか)」 「えー、もとはといやぁ、銀髪ンが九分九厘悪いやんか」 「そこまで悪くはない」 「いや、九分九厘や、それがいやなら十中八九。妥協はしない。その口調でくりゃあ問題もなっしーでよかったんに、下手に口調きもちわるぅするからいけないんや」 「……そのよく動く口、そろそろ黙れ」 「あーいぃ」 榴華は本来第一の街を根城にしている。現在『崩落した街』にいるのにはわけがあった。それは銀髪に呼ばれたから。 榴華は赤の髪の毛を伸ばしみつあみをして上でとめている。翡翠の瞳が少し眠たそうにまどろんでいた。二十代中頃と思しき容貌。赤いワイシャツは胸元まではだけている。ズボンは黒で、腰には緩くベルトが巻きつけられていた。黒いブーツの底は厚い。 胸元には金色のネックレスがかけられている。もっともその服装も『崩落した街』の影響で少し色が鈍くなっているのだが。 「高貴な役者は見つかったか?」 「いんや、みつかっとりあせーん。早々上玉なんきたら困るーって」 「あまりにも手勢が少ないと、行動を起こせないんだが、真剣に探しているのか?」 「もっちー。だってさがさなぁ殺されてしまうんやろ。梓様〜に」 「榴華は梓に随分と嫌われているからなぁ」 何ものにも興味がないような言動 全てに興味があるような言動 愛くるしく無邪気な表情 冷徹に全てを見下すような表情 そのどちらもを併せ持つのが梓 そして、彼は 最後まで見届けることなく、後始末することなく放棄する 常に何かを求める彼は、熱中するのも早ければ飽きるのも早いのが榴華 [*前] | [次#] TOP |