零の旋律 | ナノ

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 壊れた歯車の上

 必死にモガクの身体は
 徐々に少女を鎖で絡め取っていく

 取れないように、解せない様に慎重に 
 奈落の底へ墜落させていく

 闇を望み、闇を怖がる



「諦めの悪い子供っていいわよねぇ、苦しみ足掻くその悲痛な表情が、虚無と相反していて。だからぁ私はそう言う人を壊すのって面白いのよぉ、何も動かないのを壊したってつまんないじゃーん」

 ゆったりと語るその口調にはなんの悪意も感じられなかった。
 悪意も善意もなく、ただ、彼女の感情がそれを言葉に変えているだけ

 自らの本能と欲望に従ってだけ動く 
 それが、梓の生きがいで生きる意味だった
 本能と欲望を捨ててまで、何かを求めることに意味はないと思っているから
 例え自身の生涯が終わろうとも彼女は本能と欲望だけを追い求めていくだろう

 興味のないことは切り捨てて、興味のあることだけに従っていく
 怪しく横に開くその唇は不気味さを漂わせていた


「っち、頭がおかしいやつめ、私らに勝手に目をつけるのも、殺そうとするのも、私は別に恨んだりはしないが、その思考は聞いていると吐き気がするな、外道が」

 顔を顰めながら、炬奈の声のトーンは下がっていく。
 突如として現れた梓を、炬奈は不気味がっていたのだ。
 別に今まで梓のような思考を持った者に出会ったことがないとは言わない。むしろ恐らく梓より外道だと思うものに何人も出会っているし、交流がないともいわない。
 けれど、それでも梓は炬奈の中で何かが別格だった。
 梓より、最悪の人の知り合いがいても、それでも梓は何処か別の存在に感じる。
 そして、梓に出会って自分の考えの甘さに怒りを覚えた。
 ここから先に梓と同程度、もしくはそれ以上の存在が、自分たちの進路の先にいるのだろうと炬奈は考える。
 認識を改めた。


「外道って、きゃはははっ、あはっ。それは貴方もおなじじゃなーい。貴方だってぇ、我道を通すためにぃ、人を殺してきたんじゃなーいの? だったら同じよぉ」
「同類に扱っては困る。私は別に普通の人だとも、善人だとも思ってない。悪人で結構、犯罪者で結構。人も殺した。だが、私はそのような思考回路はお生憎様現在は持ち歩いていない。そして、それはこれからも持ち歩く予定はない。だから、先に言っておこう、貴様とは同類になるつもりはない」
「ざーんねんー」

 言葉と同時に首を下に下げる。
 炬奈の視界には、その梓は映っていなかった


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