第七話:最果ての街支配者 ――あぁ。全く愚かしい 望んだって手に入らないなら 最初から臨まなければいいのに ――ねぇ、そう思うだろう? なのに人はどうして臨もうとするのだろうかねぇ +++ 「低血圧な姉さん! 起きて、朝だよ」 世間一般の常識で言えば夜日が沈み、朝日が昇る時間――と思われる。 罪人の牢獄には光は差し込まない。何処まで行こうと、何時見ようと、空は曇天としているだけ。地下にあるその場所だからこそ。 だからこそ、この罪人の牢獄に最初辿り着いたものは己の感覚を信じて進むしかないのだ。 朧埼は隣で未だ寝息を立てて寝ている姉を起こす。 「低血圧は余計だ」 朧埼の声に、炬奈は起床する。声のトーンは低く、寝起きの機嫌が悪いのが一目瞭然だ。寝ていた身体を炬奈は起こす。ボサボサになった髪の毛が顔を覆い隠していた。 それを見た朧埼が僅かに後ろに身体を引いた。 「姉さん、ちょっとホラーチックで怖いんだけど」 「あー確かに前が見にくいな」 「そう言う問題じゃないと思うんですけども」 炬奈はボサボサになった髪の毛を手で軽くとかしながら、ゴムを解いて三つ網を結んでいく。 「面倒だなぁ、いっそこの場で髪を切ってしまうか」 誰かを思うほど悲しくなるのならば 誰をも何をも思わなければいいのに そうすればきっと悲しみなんてなくなるのに 「だ……ダメだよ! 姉さん、髪は長くしてなきゃ唯でさえ男前なのに、髪まで短髪にしないでよ!」 「朧埼……お前時々痛いことをいってないか?」 「え? あぁご免!! 姉さん」 自分の言った言葉に対して、手を合わせて謝る そう言えば、さっきも低血圧とかいってしまったなぁなんて思いだしながら―― 「気にするな、事実だし」 姉は特に気にした素振りを見せなかった。 「ねぇねぇ、君たちってここの住民じゃないよね?」 朧埼と炬奈が再び進む為に支度をしている時、ふと遠くのほうから声が聞こえた。 声の方向を確認すると、それは自分たちが是から進もうとしている先。 「誰だよ」 姉との時間を邪魔された朧埼は眉間に皺をよせながら、前にいる人物を見ようとした [*前] | [次#] TOP |