零の旋律 | ナノ

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 唄って祭って苦しむ
  悩みなんて、何時の世も消えうせはしないよ


「姉さん! 大丈夫?」

 遊月と唯乃二人が去った後、炬奈はゆっくりと銃を下してホルスターの中に終おうとするがホルスターの中にしまわれることなく、地面に落下する。

「姉さん!?」

 そしてそのまま炬奈は力なく前に倒れた

「だ……大丈夫だ、心配するな」

 力なき声で朧埼を不安にさせないようにするが、それが逆に朧埼を心配させる。
 無理をしているのは一目瞭然だったからだ。覚束ない瞳は憔悴している。

「大丈夫じゃないじゃん! そんな、姉さんフラフラだよ……」
「へい……きだと言っている。心配するな。だから安心しろ」
「安心なんて出来るわけないじゃないか! 俺は怪我は治せてもそれまでの蓄積したダメージまでは治せないんだから!」
「全く、朧埼は心配性なんだから」

 残り少ない力を振り絞って炬奈は起き上がる。今にも倒れそうな程不安定だったが、それでも炬奈は倒れるわけにはいかなかった。朧埼が見ている今この場で、これ以上不安にさせないために。
 朧埼の髪を流れるように撫でる。朧埼以外の前では決して見せない優しい笑顔で。

「さぁ、休もう、モタモタしていると寝ている奴らが起きだす」
「うん」

 奴らが一体誰のことを指しているか朧埼にはわからなかった。否、炬奈も正確にはわかっていないだろう。この罪人の牢獄にいる罪人たちのことかもしれないし、それ以外の輩なのかもしれない。炬奈は朧埼を安心させたいひと言から出てきた言葉だったのだから。


 眠れ、眠れー今宵は眠れ
 陽のない灰色の空を眺め今宵は眠れ――


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