第六話:日鵺 誰を持ってしてか、何を持ってしてか人は何かを求め続ける 血の最果てまで彷徨う魂の御 力なきものは力あるものに従い 力あるものは力なきものを支配する この奈落の地で生き残る支配者はいったい誰だろう ――このまま堕ちていくくらいなら最期に悪あがきくらいしよう。それも私自身の頭脳を私が活用できるだけ活用して。 「……」 炬奈は無言のまま、銃を唯乃に向ける。その姿は怪我を負っている苦しさ姿は微塵も感じられない。せ我慢かどうかを判断する術は唯乃と主にはない。炬奈はなおも呼吸一つ乱さずに前を見据えている。隙のない姿に主――遊月は僅かに肩をすくめる。 「何故、殺さないのですか?」 銃を向けられている唯乃は気にも留める様子なく恐怖する様子もなく、まるで最初から銃など向けられていないかのように、遊月の方に疑問を投げかける。 この先殺さずにいて主と敵対するのであれば今ここで殺すほうがいい。 後に回して、あの時殺しておけばよかった、なんて後悔しないように。 主に仇名す者全てが人形の敵となる 「……前ら、日鵺の人間か?」 そんな唯乃の疑問に遊月は答えず、炬奈の方を向いて質問する その言葉に炬奈はうす笑いをして答える。 「そうだ、日鵺の人間だよ」 「その少年のした行動は日鵺の血統の力だ。だが、日鵺は何年か前に殺されたはずだが?」 「貴様には関係のないことだ」 「そうか、まぁ大方予想はつくけどね、君は日鵺の血統者じゃないのかい?」 意地の悪い顔をして遊月は炬奈への質問を続ける 「貴様には関係のないことだ」 そんな遊月に対して、炬奈は先ほどと同じ言葉を繰り返す 「ふ〜ん、まぁいいけどね。日鵺の血統なんて大分前に消え去ったものだと思っていたしね。唯乃、いくよ」 これ以上何かを聞こうと思っても答えてくれない。そう判断した遊月は炬奈が構えている銃になど目のくれずに二人の前を過ぎ去って先の道を進む。二人に炬奈は発砲しない。 ただ、二人が通り過ぎていくのを凝視しているだけ。 「お先に失礼するよ。日鵺の人間」 [*前] | [次#] TOP |