第五話:染められた狂気 +++ あははははははは、 夢を見る、昔の夢だ、なんて懐かしいんだろう、 実際はそんな年数言ってないのに 夢に身を任せて夢を見ていよう ほんの束の間、昔を旅させて ――何故あなたはそんな事をしたの? わからないという顔をして わからないという言葉を並べ続けて彼らは私に言葉を放つ ――返して、帰して反して還してカエシテ!! 悲痛な叫びを合唱する彼ら、どうでもいいや だってさ 「貴方達が私をこうさせたんじゃないの!? 私があの狂った姉の妹だからってあざけ笑って冷笑して怯えて怯えて腫物を触って見下して関らないで拘束して遠くで陰口を叩く。そんなアナタ達が私をこうさせた、姉が狂っているのならば妹も同等ですってね、笑えない?」 きゃははははははあははは 「だからさ、私も姉に負けないくらい狂ってやろうかと思ったんだ」 そう――姉と同等だ、なんて言われるくらいなら姉以上になればいい。 ――ワタシをこうしたかったんでしょ? 狂わせたかったんでしょ 「だから、私は貴方達が最も大切だと思うもの、それらを影も形もないくらいに壊してやろうと思ったんだ、自業自得でしょ、ねぇ。命地位名誉夢命それらを全て私が壊してあげたんだよ、有難うの言葉の一つ欲しいものね、あははははははははははは、あきゃ」 ここで夢は覚めた ――なんか、中途半端 「おや、お目覚めかい?」 ――あぁ、ここは夢じゃない牢獄だ罪人の 「あらぁ、どうやら、寝てしまったみたいねぇ」 そう言ってソファーに横になっていた身体を起こす 紫かがった黒の長い髪が揺れる。 「梓、別にまだ寝ていてもいいんだよ?」 銀髪の青年は優しい声色で声をかける、相手を労わる様なそんな声 「……気持ち悪い相変わらずその偽りの声」 「ひっどいな、心外だよ、これでも僕はせめてもの情けのつもりなのに」 「僕だって、なおさら気持ち悪いわぁ」 「相変わらず実際は冷めているね、梓は」 「そう、この牢獄は私を梓として認めてくれるから……それならねぇ」 [*前] | [次#] TOP |